新入生とケガ予防対策
第17回 新入生とケガ予防対策2011年03月31日
新入生とケガ予防対策
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
このたびは東日本関東大震災によって多くの方々が被災され、今もなお日常生活に支障を来す日々を過ごされています。
スポーツで日本を元気にする!ということには賛成派・慎重派双方あると思いますが、今回第83回選抜高校野球大会が開催されることになりました。
一人でも多くの方々に勇気と感動を届けられるような素晴らしい大会になることを祈念しております。
さて今回のコラムでは新しく入部してくる新入生たちのコンディションとケガ予防についてお話をしたいと思います。
一年のうちでもっともケガが多く発生しやすい時期の一つが春先の3月~5月頃です。本格的な野球シーズンの到来であり、体力強化の練習から技術練習への移行期でもあります。そしてこの時期は新入生たちが練習に参加するようになります。入学したて、入部したての選手というのは、新しい練習環境・練習量・負荷に慣れていないこともあり、スポーツ傷害のリスクが高くなっているので注意が必要です。今まで経験したことのないような練習内容であったり、コーチや先輩たちの顔と名前を覚えるのにもある程度の時間がかかったりと、身体的にも精神的にもストレスを受けることが想定されるからです。
身体的なコンディションとしては新入生たちの身体的能力や土台のスタートラインは必ずしも同じではないということ。入部以前の練習環境や内容、運動量は個人によって違っており、3月までフルに練習を続けていた選手もいれば、しばらく運動をしないで受験に専念していたという選手もいると思います。このことを理解した上で体力面では基本的な動作がしっかり出来ているのか、基礎体力はどの程度あるのかといったことを把握する必要があります。入部してしばらくの期間は新入生用の練習プログラムを別に準備する、早めに体力測定を実施することなどがケガ予防につながります。
[nophoto]
相談しやすい環境を作る
[/nophoto]
精神的なコンディションとしては新入生たちは新入部員であると同時に新入生であるということ。
新しく高校生活を送る彼らにとっては野球部での活動以外にもいろいろな場面で不安や戸惑いなどを覚えることも多いことが考えられます。
さらにそこへ野球部での新しい人間関係も加わるため、いろいろと気をつかう場面が増えてしまうことが想定されます。
また練習中に痛みや違和感を覚えたときに「練習を休むべきかどうか」という相談相手がいないと自己判断でそのまま練習を続けてしまい、ケガを悪化させることも懸念されます。
チームにトレーナーが常駐している、また来てもらえるところであれば相談出来ますが、すべての学校がそのような環境にあるわけではありません。自己判断でのケガ悪化を防ぐためには、先生や先輩に相談しやすい環境を作ることや「一年生係」として上級生の担当者をつけることなども一つです。
「わからないけれども聞くことが出来ない」というストレスを出来るだけ軽減することで、新入生のケガへのリスクはずいぶん減ります。新しいチームの仲間として、チームの力としてこれからともに戦っていく大切な仲間です。ケガへのリスクを十分に理解してよりよいコンディションで野球に取り組めるよう、周囲の人々の協力が大切であることを理解していただけたらと思います。
【新入生のケガを予防するために理解しておきたいこと】
●新しい練習環境・練習量・負荷に慣れていないため、上級生とは別練習の時期を設ける
●個人差はあるもののしばらく運動をしていなかった時期が少なからずあると理解する
●基本的な動作や基礎体力を知るために、早めに体力測定を実施する
●新入生は「このぐらいの痛みで休んでいいかどうか」という判断がしにくい
●新入部員である前に新入生であり、何かと気をつかう場面が多い
●チームの一員として迎えるために周囲の人々の理解と協力が不可欠である
(文=西村 典子)
次回、第18回公開は04月15日を予定しております。