徳島商vs藤代
好投手対決は龍田に軍配が上がる
この試合は好投手対決だ。徳島商業・龍田祐貴と藤代・鵜沢 弘充。
龍田は最速143キロを誇る本格派右腕。鵜沢は130キロ台なものの、縦のスライダーが武器にする。
お互いが実力を発揮することができれば、投手戦に展開されることは想像できたが、試合は想定通り投手戦になった。
徳島商業の龍田は立ち上がりにいきなり1番豊島に左中間を破る二塁打を打たれる不安の立ち上がり。一死三塁となって振り逃げの間に先制を許す。龍田によると初回はかなり緊張していたという。
「とても緊張しました。初回は心臓がバクバクして、手も震えていたんですけど、何とか投げ切ることができました。」
その緊張状態もなんとか1失点で切り抜けたことにより幾分か精神状態も落ち着いてきたのだろう。
一方で鵜沢。
春は県大会ベスト4。関東大会目前にして敗れてしまったが、投手としての完成度の高さは高いものがあり、茨城屈指の好投手として注目され、夏では準決勝で優勝候補筆頭に挙がっていた常総学院を完封勝利に挙げる活躍を見せてきた。
決勝から試合間隔が空いたことで疲労もだいぶ取れてきたのか。この日の鵜沢のストレートは走っており、常時135キロ~140キロ(最速143キロ)を計測するほどであった。スライダー、縦に鋭く落ちるスライダーの二種類で投球を組み立てていき、徳島商業打線を打たせて取っていく。
甲子園初登板という重圧・緊張は全く感じさせず、むしろ甲子園という舞台で楽しく投げている様子が見て取れ、素晴らしいパフォーマンスを発揮させていた。
一点を取られた龍田も尻上がりに調子を上げていく。テークバックが小さくオーソドックスな投球フォームから常時140キロ~140キロ中盤まで球速を上げていく。
スライダー、カーブ、フォークを織り交ぜ、2回以降は完ぺきな投球。
好投を見せる龍田を援護したい徳島商業。
4回の裏に鵜沢を捉える2番竹内のセンター前ヒットで出塁。さらに3番幸田のセンター前ヒットで出塁。内野ゴロの間に一死2,3塁となって5番生田の一塁内野安打の間に同点。二死1,3塁となって7番岸のタイムリーで逆転に成功する。さらに5回の裏に1点を追加し、3対1。
この援護によって気合を入れなおしたのか。龍田は消耗するどころか、尻上がりに調子を上げていく。球速・球威を上げていく。
圧巻だったのは7回の表。5番満をフォークで空振り三振。6番佐藤をスライダーでピッチャーゴロに打ち取ると7番小林にはこの日最速の148キロのストレートで空振り三振に斬って取る。この三振に龍田は雄叫びを上げた。
その後も安定した投球を続け、9回も冷静に併殺に打ち取って勝利に導いた。
好投手対決を制した龍田。
立ち上がりは乱れることはあったが、2回以降は安定した投球。甲子園で自己最速の148キロを計測。
この試合では何度も140キロ中盤を計測しており、自己最速の143キロを大きく上回る内容であった。恐らく甲子園という大舞台が彼を大きく成長させていったのではないだろうか。
甲子園は予想以上に選手を成長させる場所だ。
次の登板で龍田がどんな投球をみせるのか。期待は大きい。
(文=河嶋宗一)