箕面東vs履正社
東野龍二投手(履正社)
暑く、厳しい準々決勝からの戦いを見据えて!
履正社は先発の東野龍二(2年)が8回コールドながら公式戦初完投。打線は9安打で7得点を挙げ、快勝。3季連続でベスト4進出を果たした。
岡田龍生監督は、「不思議なチーム」と現況を話す。コールドゲームとはいえ、力で圧倒した試合ではなかった。ただ、相手のちょっとした隙につけこみ、大量点に持ち込むのはやはり試合巧者だということになるだろう。特に8回2死走者なしから、9番東野のポテンヒットをきっかけに連打でコールドゲームに持ち込んだ場面は見事だった。
「9回を投げたい気持ちはあったが、簡単に攻撃を終わりたくなかった」と話したのはピッチャーであり、コールドに繋がるヒットを打った東野。
『野球は最後まで何が起こるかわからない』という視点では、相手の最終回の攻撃を断つというのは、大きな意味を持つ攻撃だった。
打順は甲子園までと変わり1番に熊本颯(3年)、2番長谷川成哉(2年)、3番宮﨑新(2年)と並び、6番に原田涼平(3年)が座る。だが、しっくりきているかと指揮官に尋ねたが、「そうでもない。今日なんかは3番と6番が機能していないわけですし」と話した。
ここまでの戦いでは、2回戦の懐風冠と3回戦の東大阪大柏原が1点差。5回戦は三国丘と2点差(5月6日レポート)だった。
「そうかと思えば4回戦の金光大阪戦みたいに17点とか取れたりする」と指揮官は苦笑いした。この日は、箕面東の先発・杉田啓輔(2年)から喫した空振りが一つもなかった。確かに掴みどころがない。
東野龍二投手(履正社)
投手陣ではこの日先発の東野が「この春では最長です」と8回まで投げた。
選抜大会のような3投手で3イニングずつの分業制から、次のステップに踏み出しているのが垣間見える。
「勝負球はどうかとか、カウント球とか」と現在東野に対して課しているテーマを説明した岡田監督。この日のピッチングで言えば、4回の先頭打者にフルカウントから四球を出したところが大きなポイントだった。
この時点では0対0。
打順は一回りし、先頭打者を出塁させる重要度が段々大きくなる場面。先に2ストライクと追い込んだだけに、「力んだ」という東野自身もこの四球を反省していた。
そして、「四球を出してしまったのが尾を引いた」と次の打者に初球を打たれヒットになった。結果的にその後併殺でピンチを凌いだが、0対0という緊迫した展開を考えた時に、先頭打者の四球をどう捉えるか。全国の球児にも考察してみてほしい。
杉田啓輔投手(箕面東)
一方で敗れた箕面東。
悔やまれるのは、4回裏の『4』、5回裏の『2』という数字だ。
4回は2死2、3塁という場面。7番庄野雄斗(3年)の打球はファーストゴロ。だが、ピッチャー・杉田のベースカバーが遅れ、セーフに。完全に打ち取っいてこれでチェンジという当たりだっただけに、ベンチの長谷至康監督も思わずカバー遅れを叱った。
続く8番乾駿斗(3年)はライト線への長打。履正社に2点目が入ったが、ライトからの返球がやや乱れている間に、一塁走者の庄野が一気に本塁を陥れた。ビッグイニングに繋げる3点目。
基本的な部分のカバー遅れが、野手陣へのダメージをもたらしていたのかもしれない。
5回の2失点は、1死から小保根誠(3年)の打球を処理しようとした内野手の失策から始まったものだった。直後の5番沖田勝俊(2年)に三塁打を浴びた杉田。
さらにとどめは2死3塁から7番庄野の絶妙なバントヒットを決められた場面。2死なので『スクイズはありえない』と思える状況だったが、試合巧者ぶりをまざまざと見せつけられたのではないだろうか。
この2チームに大きな力の差は感じない。大差になったのは、こういった細かい部分にあるように思える。得点を取る術。失点しない術。そして準々決勝以降というステージでの経験。
ここから先、公立校が私立の強豪に勝つ為には何が必要なのか。それを残り2カ月でどんな答えを見つけ出すことができるだろうか。
大阪大会準々決勝。“夏”はここから3連戦。暑さ、体力、気力と最も苦しい状況になるが、最後まで負けなかったチームが頂点に立つ。
スターティングメンバー
【箕面東】
3徳冨祐吾、7丸子康太郎、9西川翔哉、8中井達也、5成田一輝、6南曲久史、4石井結、 2進藤剛成、1杉田啓輔
【履正社】
6熊本颯 、8長谷川成哉、4宮﨑新、3小保根誠、7沖田勝俊、9原田涼平 、5庄野雄斗、2乾駿斗 1東野龍二、
(文=松倉雄太)