神村学園vs伊集院
神村学園・平藪投手
鉄壁の守り
神村学園といえば、強打や機動力といった攻撃野球の印象が強いが、春の九州大会から顕著なのは守りの堅さだ。
この日も伊集院を完封し、今大会は初戦から3試合連続で完封勝ちした。
さかのぼれば4月以降の公式戦では、九州大会の久留米商(福岡)戦の初回に2失点したのが最多失点で、あとは1失点以下という安定ぶりである。
「1人1人の捕球や送球の技術がうまくなり、試合を重ねるごとに連携もうまくとれるようになった」と守備の要・ショートの田中貢大は言う。
今大会3試合でエラーはわずかに1つ。個々の技術向上もさることながら、何より「バッテリーがしっかりしている」(田中)ことが守備に良いリズムをもたらしている。
「中野(大介)がリードする通りに柿澤(貴裕)も平藪(樹一郎)も投げてくれるので、僕らはそれを頭に入れてポジショニングを考えたり、一歩でも早いスタートが切れる」から、相手はこの鉄壁の守りを突破してホームに迎え入れることが困難なのだ。
先発した左腕・平藪樹一郎は5安打に封じ、準々決勝に続く連続完封だった。
「川内戦の時ほどボールはきてなかったが、その分、低めのコントロールが良かった」と振り返る。
この時は、はワンバウンドするチェンジアップをうまく使って空振りを誘い、三振の山を築いた。ボールをしっかり見極めてくる伊集院打線に対しては、スライダーを低めに集めることでゴロの山を築いた。
春の九州大会以降、本来の投球ができずに苦しんでいた時期があったが、シャドウ投球を繰り返すことで体重移動のコツをつかみ、本来のキレを取り戻した。「調子は良くなかった」というこの日でも直球が最速137キロで、常時130キロだから、合格点の内容だろう。
九州大会決勝の後では、春の選抜大会までつけていた背番号1を柿澤に譲ったことでその奪還に燃えていたが「今は(背番号が)7番なので7番の仕事をしたい」と言う。投げるだけでなくチームの主軸打者としての責任もある。
何より「チームが勝つ」ために自分の仕事に徹する覚悟を固めていた。
山下雄也(伊集院)
伊集院は夏に向けて打線を鍛えてきたが、平藪を攻略できなかった。
打球の音はしっかり捕えていたようにみえても「実際は詰まらされていた」と話した内野公貴監督。
「夏、ここ(神村学園)に勝とうと思ったら、もっと振り込んでいかないと」と選手の奮起に期待していた。
ただ三番手で登板した山下雄也にとっては、自信を取り戻した大会になった。春の鹿児島城西戦ではリリーフに失敗。
それ以降、フォームをスリークオーターに変え、メンタル面の改善にも取り組んでいる。今大会は準々決勝を除く3試合にリリーフで登板した。
この日は5回からのリリーフ登板だった。まだボールは荒れ球で、細かい制球がきかない場面もあるが、「緊張はするけど、うまく気持ちを切り替えられるようになった」。
9回に3連打で2点を失ったが、神村打線を相手にも十分戦える手ごたえはつかめた。
(文=政純一郎)