峰山vs洛北
諦めない気持ちが、格言を現実に変えた。
試合はほぼ終わったかのようにみえた。
“野球は最後のアウトを取るまで何が起こるか分からない”という格言があるとはいえ、9回表を迎えた時点で、5点の差があったのだ。心が折れても、不思議ではない。
ところが、昨秋に2点差を9回二死から追いついた経験を持つ、峰山は諦めてはいなかった。
「5点差もあってヤバイなとは思いましたけど、こんなところで負けていられないという気持ちでした。自分が9回の先頭打者だったので、盛り上げようと思った」と話したのは主将の平井杜夫(3年)である。
その平井が9回表の先頭としてセンター前ヒットで出塁。その後、二死を取られるも、一、三塁と攻め立てると打線がつながった。
途中出場で1番に入っていた小林享峻(3年)がセンターへタイムリーを放つと、続く2番、これも途中出場の東将司(3年)がライトへのタイムリーで続く。3番前田透要(2年)もタイムリーでさらに繋ぐと、最後は主砲の細見吉彦(2年)が走者一掃の三塁打を放ち、一気に5得点を奪った。
平井が3年生なら、二死からつないだ途中出場の2人も3年生だった。スタメンの多くを2年生に譲りながら、3年生の意地が試合を終わらせなかったのだ。峰山を率いて3年目になる飯高英世監督は言う。
「夏は何が起こるか分からないという中で、3年生が力を出してくれた。今年のチームは力がないって言ってきたのですが、諦めずにやってくれました。どれだけ負けていても、勝ちに行くんや、と。練習試合でも、勝利にこだわってきたことがつながったのかもしれない」。
実は、大会直前、6月末の練習試合でも4回で0対7という展開から試合をひっくり返したそうだ。「この試合は負けたらヤバいけど、落ち着いて戦っていたら勝機は来る」と声を掛けると、本当に勝ってしまったのだ。この日の試合も、「落ち着いて戦えば…」と語ったところ同じになった。
峰山は京都府の北部京丹後市に学校がある。京都の中でも、雪の多い地区で、特に、昨年の冬は大雪に見舞われることが多かったそうだ。積雪のため、グラウンドが使えなかった。飯高監督は言う。
「雪の多い地区ではあるんですけど、この冬は特に多かったんです。そんな時期は素振りとか下半身のトレーニングばかりなのですが、今年のチームは、いつもと違って、全然、手を抜かないチームでした。意識を高く持って、やる選手ばかりなのです」。
平井主将が胸を張って話してくれた。
「チームが崩れかけた時もあったんですけど、みんなで話し合って、自分たちの好きな野球をやっているんやから、やらされるんではなくて自分たちで意識を持ってやるようにしました。冬場は最後のサーキットトレーニングがしんどいんですけど、カラ元気でもいいからって、元気を出して、最後までやりきってきました。勝ちたい気持ちが強くて、試合で諦める気持ちなんてなかった」。
“野球は最後のアウトまで何が起こるか分からない”
峰山ナインの諦めない気持ちが、格言を現実に変えた。
スターティングメンバー
【峰山】
9志村駿太
5梅田一馬
6前田透要
2細見吉彦
7中島隆雄
3平井杜夫 (主将)
8奥田開仁
4蛭子朋也
1安田雅史
【洛北】
8佐藤允彦 (主将)
5金子俊馬
6佐藤将哉
1足立真
9萩原朋哉
4崎口佑也
3桑垣凌哉
7伊佐嘉真
2廣嶋圭佑
(文=氏原英明)