第86回センバツ大会総括(野手編)
龍谷大平安の優勝で終わった第86回センバツ大会。総括の2回目は、野手に焦点を当てた。
智弁学園の岡本和真、横浜の浅間大基と高濱祐二はドラフト上位指名必至
岡本 和真 (智辯学園)
このセンバツを見渡して、野手で今秋のドラフトで上位候補にリストアップされるのは岡本 和真(智弁学園)、浅間 大基、高濱 祐仁(ともに横浜)の3人だろう。岡本は三重戦で2本塁打。投高打低といわれる春先にもかかわらず、挨拶代わりのアーチは見事。評判通りの実力を示した。続く2回戦では、高い屈指の好投手田嶋 大樹(佐野日大)と対戦。4打数1安打2三振。要所では、田嶋にあしらわれてしまった感はぬぐえない。
横浜は、初戦の八戸学院光星に大差で敗れて早々に甲子園から姿を消したが、高濱と浅間がそれぞれ長打を含む2安打を放ったのは、名門の意地というところか。高濱は、第1打席でセンターフェンス直撃の先制二塁打を打ったように長打力は超高校生級。浅間は内角を徹底的に攻められ、2つの死球も受けたが、右方向への強い打撃は高い潜在能力を感じさせる。「投高打低」のセンバツで見せた2本ずつの安打は、スカウトの眼に留まったことだろう。
捕手では、優勝した龍谷大平安の高橋 佑八が光る。5試合で15打数6安打。恐怖の8番打者として怖れられた。岸田 行倫(報徳学園)と池田 瞳夢(関東一)はスローイングタイム1.9秒台を計測した強肩がウリ。盗塁を刺すだけでなく、走者のリードが大きければ、積極的に刺しにいく。
島崎 真門(鎮西)のリードに眼が止まった。鎮西のエース須崎 琢朗は球速120キロそこそこの軟投派。変化球でコーナーを出し入れして、連打を許さなかった。7安打で2失点は立派な数字だ。打席に入っては、田嶋から3安打と気を吐いた。今センバツで田嶋から3安打を放ったのは、島崎と西岡創太(明徳義塾)のみである。
[page_break2年生に逸材多く、夏までにさらに飛躍出来るか。]
2年生に逸材多く、夏までにさらに飛躍出来るか。
徳本 健太朗 (龍谷大平安)
内野手では、竹村律生(佐野日大)のプレーが光った。明徳義塾戦(2014年3月31日)では、1番に抜擢され、3安打と活躍。吉田 有輝(履正社)は21打数9安打、チームの準Vに貢献した。強打の八戸学院光星は深江 大晟、北條 裕之の活躍が期待された。しかし、2回戦で龍谷大平安に破れた。不完全燃焼の感はいなめない。北條は9打数3安打2二塁打、深江は8打数3安打1本塁打では本人も納得いかないだろう。
稲葉 皇介と菊池 海斗(ともに山梨学院大附)の2人はスケール溢れる強打者だ。山梨学院大付は今春の大雪で満足な練習ができないままでのセンバツだった。中盤、エラーからの4失点は悔やまれる。西岡 武蔵(三重)は、初戦の智弁学園戦で劣勢の中、左翼へ意地の本塁打を放った。06年夏以来の8強入りとなった福知山成美は、2番から1番に変わった西田 友紀と4番の前田 涼太は、ともに13打数6安打。準々決勝では、バットが湿りともに4打数1安打で、チームも敗れてしまった。
外野手では、龍谷大平安の1、2番コンビの徳本 健太朗、大谷 司に注目したい。徳本は22打数8安打。加えて、4盗塁でチャンスを広げた。大谷は21打数8安打。選球眼がよく中軸につなげる役割に徹したことが、チームの優勝につながった。また履正社戦(2014年3月27日)で3打数3安打を記録した伊藤 優希(駒大苫小牧)はバットコントロールが優れ、出塁すれば、常に盗塁を狙う姿勢、スピードが魅力だ。
新2年生では明徳義塾戦(観戦レポ―ト part1 part2)で豪快な本塁打を放った山本 龍河と巧打が光る春野航輝(ともに智弁和歌山)は夏以降の成長に期待したい。また小野田 凱(桐生第一)はエース山田 知輝の持ち味を引き出す絶妙なインサイドワークと、思い切りの良い打撃スタイルで、安打を連発。開幕試合の岩国戦(2014年3月21日)で本塁打を放った山本 卓弥(神村学園)は長打力、インコースをさばける打撃技術の高さは今大会でもトップクラスだった。冬を越えて、パワーに技術が備わり、打撃の幅が広がった大下 誠一郎(白鷗大足利)には、この夏以降にも注目したいところだ。
(文=河嶋 宗一)