試合レポート

鳴門vs鳴門渦潮

2014.08.04

鳴門、先輩メソッドと1年生リレーで「王政復古」果たす!

 徳島県31校の代表を決するにふさわしい、素晴らしい決勝戦であった。

 高橋 広監督・最後の夏を甲子園出場で飾るべく燃える鳴門渦潮は、1対6で迎えた7回裏に3番・平間 隼人(3年・遊撃手・右投左打・172センチ72キロ・牟岐町立牟岐中出身)の2点適時打、5番・多田 大輔(3年・捕手・右投右打・189センチ92キロ・徳島市立応神中出身)の適時打などで4点を返し、鳴門に激しく抵抗。

 前日に第2シード・生光学園相手に195球3失点(自責点1)完投勝利の疲労はさすがに隠せず、全てのボールが走らないまま4回3分の2・6失点(自責点6)降板となったエース・松田 知希(3年・投手・左投左打・174センチ74キロ・徳島ホークス<ヤング>出身)の無念を4回3分の1無失点リリーフで晴らした右サイド・門田 怜句(3年・右投右打・171センチ71キロ・那賀町立相生中出身)含め、彼らの「つながる野球」はスタンドの感動を呼んだ。

 だからこそ昨秋今春は県8強止まりの鳴門がノーシードから頂点へ。
鳴門渦潮のリベンジを果たし3年連続夏の甲子園徳島県代表を勝ち取った価値は「王政復古」の称号獲得以上に大きい。

 かつ、その内容も板東 湧梧(現:JR東日本)をエースに近年にないタレントが集った昨年に負けず劣らず充実したものであった。

 守備網は4失策こそ出たものの、打者と配球に合わせた的確なポジショニングでヒット性の当たりを数多く阻止。
打線も4番・北尾 勇人(3年・三塁手・右投右打・180センチ78キロ・吉野川市立鴨島第一中出身)は5打数3安打3打点(通算では24打数14安打13打点)5番・橋川 亮佑(3年・右翼手兼一塁手・右投左打・182センチ80キロ・徳島ホークス<ヤング>出身)も5打数2安打1打点(通算では22打数14安打7打点)と、最上級生に投手から野手に転向したクリーンナップが最後の最後に結果を残すことに。これは正に先輩たちのメソッドを残さんとする彼らの責任感がなし得た業である。


 そして忘れてはならないのは「1年生投手」。
エースナンバーを背負う菅 良磨(2年・投手・左投左打・169センチ63キロ・鳴門市立第二中出身)が本調子ではない中、3人の1年生は完全に鳴門の屋台骨を支えていた。

 特に決勝戦に登板した2人は秀逸だった。
昨年の主将・河野 祐斗(現:明治大1年)の実弟でもある左腕・河野 竜生(1年・左投左打・172センチ72キロ・鳴門市立第二中出身)は、準決勝・徳島池田戦からの連投にもかかわらず先発7回3分の0で128球・被安打7・与四死球3・奪三振3で失点5(自責点3)。
目測130キロ前後のクロスファイヤーとスライダー、スローカーブ、チェンジアップを昨年からのメンバー向 洸旗(捕手・3年・右投右打・172センチ76キロ・徳島東リトルシニア出身)のリードに導かれ、しっかりと投げ込んでいたことが晴れ舞台での「巧投」につながった。

 一方、中山 晶量(1年・右投右打・185センチ75キロ・生光学園中<ヤング>出身)は、「凄み」で勝負し、2回打者9人を与四死球2・犠打1のみの無安打リリーフ。今大会NPBスカウトのガンでも「138キロ」をマークしたストレートと、縦に鋭く切れるスライダーは、1年生のものとは思えないものだった。
8回裏一死満塁と絶体絶命の場面でスクイズを外し無失点で切り抜け、最後は冷静にスライダーで三振に仕留めた勝負勘のよさも、今後への期待を抱かせる。

 昨年のような「豪打」はおそらく見られないだろう。しかし、一番出さねばならない状況で最大限力を出し切れる「チーム戦術」と「個人戦術」の融合度はむしろ昨年以上。これに「勢い」が加われば、鳴門昨年ベスト8以上のものを残す可能性を秘めている。

(文=寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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