都立片倉vs都立葛西工
独特のフォームの葛西工・平野君
高校野球はさまざまな環境の違うチームが戦う。とくに、新チームとなる秋季大会は3年生が抜けると、部員確保もままならないくらいのチームもあれば、2年生たちが、「いよいよオレたちの時代だ、よーし、やるぞ!」と2年生たちの気持ちが盛り上がっているチームもある。
この試合もまさに、そんな状況の異なるチームの対決となっただけに、シートノックの段階からある程度の力量の差は見て取れた。
新チームは7人の正式部員しか残らず、何とか試合が出来るようにかき集めてという葛西工は、正直、野球経験がほとんどないのではないか…と思われる選手も試合に出場せざるを得なかった。ギリギリのメンバーでの大会参加である。
守永純一監督も、「本当は、中学時代に野球をやっていた経験のある子も(学校には)いるのでしょうけれども、部としてはなかなか部員が集まらないんです。それでも、毎日練習に来てくれる子がいますから、こうして大会に参加することが出来るようになりました」と、夏休みの間に練習に精を出してきた生徒たちのことを評価していた。
会場校でもある片倉は、朝からグラウンド整備や大会運営に追われる一方で、試合へ向けての準備も怠れない。宮本秀樹監督は、「こうして朝から、いろいろ準備したりしていると、自分たちの試合のことを忘れかかっちゃうね。何だか、1日がずいぶん長いですよ」と、言いつつも、朝から動き回っていた。
片倉・繁森君
何とか大会参加にたどり着いた葛西工に対して、都立片倉は8月早々から岐阜県遠征で県岐阜商、岐阜、関商工といった甲子園経験のある強豪と手合わせをし、その後も長野県遠征を組むなど、秋へ向けて準備を積んできた。葛西工との力の差は歴然としていたのは否めない。
都立片倉は初回に2四球などで好機を作ると、5番石井君の左前打で先制。まずい走塁で2点目は逃したものの、2回には1死二三塁から9番鈴木大地君の右越三塁打に能登屋君のスクイズで3点。3回にも3番繁森君の左翼へのソロホーマーなどでさらに4点、4回も攻撃の手を緩めることなく失策絡みで4点を追加した。
投手も背番号10の松尾君が持ち味の鋭いタテのスライダーを武器に、4イニングを1安打7三振で無失点に抑え、最後は1年生の伊藤充君が、力のあるストレートで抑えてほぼ万全の継投だった。都立片倉としても、エース矢ケ崎君を使わないで戦えたことは大きかったであろう。
宮本監督は、「前のチームよりも、まとまりとしてはいいと思っていますよ。誰かが調子悪くても、補っていかれるだけのものがありますからね」と、新チームのスタートとしては、金井君(現立正大)らがいて、最終的にはベスト4にまで進出した一昨年のチームよりもいい感触を得ているようだ。
(文=手束仁)