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【小関順二がストップウォッチで有力選手を分析!】大阪桐蔭の「好球必打」の精神はいかに受け継がれているか?

2015.03.24

 注目の一戦となった大阪桐蔭vs東海大菅生に9対0の大勝。好投手を打ち崩す大阪桐蔭の対応力は恐るべしです。ではその強打はいかにして生み出されているのか? スポーツライター・小関順二氏が独自の視点で分析します!

「好球必打」の精神はいかに受け継がれているか?

 大阪桐蔭の西谷浩一監督が中学生を見極めるポイントは「ファーストストライクから打っていける選手かどうか」だと聞いたことがある。大阪桐蔭OB、西武の中村剛也浅村栄斗のバッティングスタイルを見れば「好球必打」の精神がいかに受け継がれているかわかるだろう。そして、現役選手も先輩たちに負けず劣らず勝負が早い。この試合の得点シーンを見てみよう。

◇1回表
(2死一、二塁)→5番藤井健平は2ボール1ストライクからセンター前タイムリー
(2死一、二塁)→6番谷口一樹は3ボール1ストライクからセンター前ヒット
◇3回表
(無死二塁)→5番藤井は3ボール2ストライクからタイムリー三塁打
(1死三塁)→7番原田知希は3ボール1ストライクからタイムリー三塁打
(1死三塁)→8番吉澤一翔は2ボール1ストライクからタイムリー二塁打
◇4回表
(無死走者なし)→2番永廣知紀は2ボール2ストライクから二塁打
(1死三塁)→4番青柳昴樹は1ボールからタイムリー二塁打
◇5回表
(1死二、三塁)→2番永廣は2ボールから2点タイムリー二塁打

 1回の藤井(3年・ライト)、谷口(3年・キャッチャー)の1ストライクは見逃し、3回の藤井の2ストライクは見逃しとファウル、原田の1ストライクはファウル、吉澤の1ストライクは見逃し、4回の永廣の2ストライクはファウルと空振り、という内容である。
 大会屈指の好打者、福田光輝(3年・ショート)は5打席で安打は1本だけだったが、見逃しのストライクは1つもない。大阪桐蔭の強さの一因を挙げろと言われれば、私は迷わずこの“攻撃的精神”を挙げる。

 東海大菅生の先発・勝俣翔貴(3年)は大阪桐蔭の「攻撃的精神」イコール「ストレート狙い」と思ってしまったのではないか。この前の試合、九州学院対八戸学院光星八戸学院光星の先発・中川優九州学院各打者の性急なタイミングの取り方を見てストレート狙いを察知し、徹底した変化球攻めを敢行、これが見事に功を奏した(9回、被安打7、与四死球3、失点・自責点2)。勝俣も直近の試合に影響されたように見えた。中川同様の“変化球多投作戦”を試み、大阪桐蔭打線は迷いなく勝俣の変化球を打ち砕いた。
 藤井は1回のタイムリーがチェンジアップ、3回の三塁打がスライダー、永廣は4回の二塁打がスライダーだった。勝俣はこの日のストレートの最速が142キロだから特別速い投手というわけではない。最大の持ち味の縦に割れるカーブとスライダーを多投して、ストレート狙いの打線を翻弄しようという目論みだったのだろう。しかし、序盤でこの目論みは粉砕された。

 大阪桐蔭の先発左腕・田中誠也(3年)は強打の東海大菅生打線を4安打、6三振で完封した。大会前は投手力に不安があると言われ、私もそう思っていたが、味方打線の大量リードを背景にカーブ、スライダー、チェンジアップを多投しピッチャー優位のカウントを早いうちに作り、やはり変化球を勝負球にした配球で凡打の山を築いた。ストレートは130キロ前後がほとんどで速くはないが、コーナーワークと際どいコントロールが絶妙で、東海大菅生打線に付け入るスキを見せなかった。走攻守すべてが高レベルの今年の大阪桐蔭。夏春連続優勝は夢物語ではない。

東海大菅生:勝俣、山口、羽生-齋藤
大阪桐蔭:田中-谷口
三塁打:藤井、原田、永廣(大)
二塁打:吉澤、永廣、青柳(大)

(文=小関順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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