【小関順二がストップウォッチで有力選手を分析!】木更津総合投手陣を攻略した鈴木将平(静岡)の驚異的な脚力
投手2枚揃える木更津総合投手陣を攻略し、ベスト8を決めた静岡。攻略のきっかけを作った、静岡の静岡 鈴木将平の脚力に迫ります。
木更津総合投手陣を攻略した鈴木将平(静岡)の驚異的な脚力
1回戦の岡山理大付戦(試合レポート)で素晴らしい投球をした木更津総合の左腕、早川隆久(2年)を見て思い出したのが“最後の300勝投手”鈴木啓示(元近鉄)の技巧派に転じたあとの投球だ。技巧派に転じたあと、と言っても、通算317勝の約半分に当る160勝をこの技巧派時代に挙げている。どういう投手だったのかというと、テークバック時の胸の張り方に特徴があり、腕の角度はスリークォーター。上体の上下動や肩の早い開きがなく、ゆったりと腕を振ってキレのいいストレートと変化球、そして正確な制球力を誇った。上背が180センチ以上ある鈴木にくらべ早川は178センチと劣るが、堂々としたフォームと変化球のキレは実に鈴木を彷彿とさせるものがあるのだ。
その早川がこの試合では5回途中で降板した。成績は5回3分の0を投げ、被安打8、奪三振4、失点・自責点とも3で、ストレートは130キロ台中盤が多かった。縦変化のカーブ、スライダーがキレ、角度とも一流でも、ストレートに勢いがなければ緩急の冴えは生まれない。江口奨理(浦和学院・3年)、鈴木昭汰(常総学院・2年)、大江竜聖(二松学舎大付・2年)とともに注目された左腕は、志半ばで聖地・甲子園をあとにした。
この早川攻略に貢献したのが静岡のチャンスメーカー、1番静岡 鈴木将平(2年)だ。早川と同様に174センチと上背は足りないが、0対1で迎えた4回表には先頭打者として2得点の呼び水となる中前打を放ち、5回には2死一塁の場面で死球を得て出塁、3点目のホームを踏む走者を得点圏に進めた。
この鈴木が凄いのは第1、3打席で左前打、中前打を放ったときの一塁到達タイムが4.28秒、4.26秒と、私が俊足の目安にしている4.3秒未満をクリアしていることである。1回戦の立命館宇治戦でも第1打席の二塁ゴロで4.15秒、第4打席の二塁打のとき7.72秒で二塁ベースに到達している。つまり鈴木は三振、フライアウト以外の打席ではすべて俊足の目安となるタイムをクリアしている。こういう選手はなかなかいない。
試合結果は静岡が4対2で接戦を制したが、気になるプレーもあった。3対1で迎えた9回表、静岡は四球、野選で無死一、二塁のチャンスを迎え、打者は静岡のエース、村木文哉(2年)。村木は三遊間方向にバントを決め、これがヒット性の打球になる。さあ無死満塁のチャンスになるぞと思ったが、村木はきちんと走らない。4.75秒かけて一塁に到達したときは打球を処理した投手から一塁にボールが送られ、無死満塁のチャンスになるはずだった場面は1死二、三塁になってしまった。
9回裏のピッチングに備えて走者として塁上に残ることをよしとしなかったのでは、という意見もあったが、日々の練習は何のためにするのかと言えば、それくらいの消耗に耐えられるためにする、と言ってもいい。結果的にはその後、2死満塁の場面で相手投手の暴投が飛び出し4点目を入れるのだが、準々決勝の難敵、敦賀気比を打ち破るためには当たり前のプレーを当たり前にこなすことが大事である。準々決勝を前に、静岡に新たな課題が生まれた。
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木更津総合:早川、鈴木-大澤、阿賀
静岡:村木-堀内
二塁打:安本、大石(静)
(文=小関順二)
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