【小関順二がストップウォッチで有力選手を分析!】高橋純平攻略から見る浦和学院の役割分担の徹底さ
大会ナンバーワンピッチャーとしてその名にふさわしい投球を続けていた高橋純平(県立岐阜商)を攻略した浦和学院打線。浦和学院打線の強みを小関順二氏が徹底分析!
髙橋純平攻略から見る浦和学院の役割分担の徹底さ
大会ナンバーワン投手、県岐阜商の高橋純平(3年)と、大会屈指のチェンジアップを操る浦和学院の左腕、江口奨理(3年)との投手戦が予想され、その通りの展開になった。高橋は2回戦までのストレートとくらべると物足りなかった。スピードガン表示に映される数値的なものもそうだが、リリース時のボールを押さえ込む感覚が2回戦までにくらべると弱く、低目の伸びにいつもの冴えがなかった。それでも6回まで散発4安打、無失点に抑えたのはさすがだった。
江口はとにかく“真縦”と形容していいチェンジアップ、スライダー、カーブのキレと角度が素晴らしく、いずれもストレートと同じ腕の振り、腕の角度から繰り出されて打者を翻弄した。三振を7つ奪っているが私の目にはその球種はいずれもチェンジアップで、そのすべてが空振りだった。待球作戦も取られたようだが、それを察知すればストライクコースに入れてきて、それが高めに浮かないところが江口のすごいところである。“いやいやをするように”という表現があるが、県岐阜商各打者のチェンジアップに対するときのスイングがまさにそれだった。
試合が動いたのは0対0で迎えた7回裏だ。6回から高橋の球筋は高めに浮くようになり、思い返せば2回戦の近江戦でもそういう傾向はあった。それを待っていたように5番幸喜勇諮(2年)からヒットが3本続いて先制点を奪い、1死満塁から9番江口のセンターへの犠牲フライで2点目、1番諏訪賢吉(2年)のライト前ヒットで決定的とも言える3点目を追加した。
江口も終盤になって変化球のキレに衰えが見え始めていた。6回までに7個取っていた三振を7回以降は1つも取れず、7回は先頭打者にヒットを打たれ、8回はヒット、エラーで2死二、三塁のピンチを迎え、9回は2本のヒットを打たれている。7回は江口の一塁けん制球、9回は無死一塁の走者が4番打者の一塁ライナーに帰塁できず併殺と、浦和学院が守り抜いたと言っていいが、ピンチの連続だった。
関東大会までは圧倒的に強いが、関東を出るとあっけなく負ける、というのが以前の浦和学院の評価だった。それが2年前の選抜優勝(試合レポート)でひと皮剥けた印象がある。各打者が自己主張せず役割分担を徹底する、というのが甲子園で結果を残す学校の特徴である。それが今年の浦和学院にもある。1番諏訪が出塁して2番臺浩卓(3年)がバントで送り、クリーンアップで走者を還すという得点パターンである。チャンスメーカー2人のこれまでの成績を振り返ってみよう。
◇1回戦・龍谷大平安戦(2対0)
諏訪=5打数3安打、臺=4打数1安打(犠打1)
◇2回戦・大曲工戦(5対1)
諏訪=4打数1安打2打点、臺=2打数0安打1打点(犠打2)
◇準々決勝・県岐阜商(5対0)
諏訪=4打数2安打1打点、臺=3打数1安打(犠打1)
当たり前のことを当たり前のようにやるという森士監督の采配と、采配の意図を汲んだ選手の徹底さがよくわかる。諏訪は全力疾走でも注目される選手で、この県岐阜商戦では第3打席のバント安打のときの一塁到達タイムが3.79秒だった。この一塁到達タイムは私の計測では今大会2位の記録である。ちなみにナンバーワンのタイムは木更津総合対岡山理大戦に途中出場した矢代明日翔(3年)の三塁内野安打のときの3.64秒である。疲れが出てくる準々決勝、足場の悪い雨上がりの試合という諸条件を見れば、諏訪の脚力は大会ナンバーワンと言ってもいいと思う。
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県岐阜商:髙橋-加藤
浦和学院:江口-西野
二塁打:津田、山崎(浦)
(文=小関順二)
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