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【小関順二がストップウォッチで有力選手を分析!】天理の新カラー・舩曳 海、旧カラー・坂口漠弥が糸満を圧倒!

2015.03.26

 天理の強力打線が糸満投手陣を攻略。小関順二氏は今年の天理打線をどう見ているのか、ストップウォッチ的な観点から天理打線を分析!

天理の新カラー・舩曳 海、旧カラー・坂口漠弥が糸満を圧倒!

大会9号となる本塁打を放った坂口漠弥(天理)

タレント軍団、天理で圧巻だったのは1番舩曳海(3年)の俊足と4番坂口漠弥(3年)の長打力で、ストップウォッチの部分では舩曳の独壇場だった。第1打席の一塁ゴロではまったく足を緩めず3.97秒で一塁を駆け抜けた。3回の1死三塁の場面では外角低めのチェンジアップを体勢を崩しかけながら捉え、前進守備の一、二塁間をゴロで抜いて先制の走者を迎え入れた。

 さらにそのあと二盗を敢行、アウトになったが動く動作をした瞬間から二塁ベース到達までに要したタイムは3.20秒。プロ野球でも数人しか記録できない圧巻のタイムに思わず声が出た。第5打席では低目変化球を捉え深々と右中間を割る三塁打を放ち、三塁到達タイムは11.17秒。これなどはプロ・アマに限らず、年間数人しか記録できない「超」の字がつくスーパーなタイムである。

 俊足でありながら3番を打ってもいい風格を備え、実際にこの三塁打などはきちんとバットを振り抜いて甲子園最深部に打球を運んだ。

 舩曳に牽引されたのか天理の選手はよく走った。私が俊足の目安にする「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアしたのは4人8回。舩曳以外では2番斎藤佑羽(3年)が第1、4、5打席の内野ゴロで4.3秒をクリア、5番冨木 崚雅(3年)が第1打席のバントで4.3秒をクリア、そして8番前久保智也(3年)が三塁打を放ったとき11.75秒で三塁を陥れた。

 以前の天理は攻撃力があっても重戦車のような選手が多く、機動力という点では物足りなかった。2011年に監督返り咲きを果たした橋本武徳監督と、2人のプロ野球OB、中村良二山崎慎太郎両氏の指導方針が天理の新しい魅力を引き出したのだろう。

 天理の旧カラーを身にまとっているのが4番坂口、と言っても力まかせにバットを振り回す力自慢ではなく、合理的なバット操作でひときわ目立った。重心を落として低く構えているところは重戦車のようだが、バットのグリップの位置を肩下から肩上に上げ、浅い縦スイングでボールを捉えようとしているところがいい。力自慢で多いのはグリップを下げて打つ「ヒッチ」のほう。坂口は反対に上げるほうである。第1、2打席ですべて外角を攻められて四球、第3打席は三塁ファールフライに倒れ、第4打席は1ボールからの低目ストレートを浅い縦スイングで捉えて左中間の最深部に放り込んだ。9回の正面のライナーを飛球できず、このエラーをきっかけに1点を失っているので、今後の課題は守り。走るほうは求めないほうがいいと思う。

 速く走ることを求めたいのが3番貞光広登(3年)である。7回の無死一、二塁のチャンスに4-6-2の併殺打を喫するが、このときの一塁到達タイムが4.42秒。軽快な遊撃手としてのフィールディングや華麗なサイドスローからのスローイングなどディフェンスは文句なく、バッティングも天理の3番を打つだけあって確実性がある。唯一足りないのが「俊足」というピース。遅いわけではないので、4.3秒未満を目標に夏までに仕上げてほしい。この併殺がなければ走者一、三塁になり、坂口の2ランは3ランになったのだから。

 天理の全力疾走は糸満にも伝染した。一塁到達4.3秒をクリアしたのは天理を上回る5人7回。実力で及ばない部分を全力疾走で補って対抗しようとする姿勢は非常に好感が持てる。低迷する九州勢のなかで沖縄勢は上位に食い込むことが多いので、今後は九州を牽引するという自覚をもってプレーしてほしい。

糸満:金城乃、平安、安谷屋、金城乃-比嘉
天理:斎藤、森浦-堤田
本塁打:坂口(天)
三塁打:舩曳、前久保(天)
二塁打:前久保(天)、池間(糸)

(文=小関順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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