Column

【小関順二がストップウォッチで有力選手を分析!】脱力投法を追求する森奎真(豊橋工)の次なる課題

2015.03.27

 豊橋工の森奎真東海大四戦で13奪三振の力投。選抜前から好投手として注目されていた森投手を小関順二氏はどう見たのでしょうか。

脱力投法を追求する森奎真(豊橋工)の次なる課題

豊橋工のエース・森 奎真

  選抜大会期間中、大阪・毎日放送(MBS)早朝番組「みんなの甲子園」にコメンテーターとして出演している。前日の試合の総括と今日行われる試合のポイントを語りながら、出場選手1人をピックアップし、その成長ストーリーを紹介するコーナーがある。3月27日(金曜日)に取り上げたのは豊橋工・森奎真投手(3年)で、興味深いエピソードが林泰盛監督によって語られた。

 森は1年前、1試合の10個くらいの四球を出すノーコン投手だったらしい。それを解消するために林監督と森の二人三脚によってフォーム改造が行われたのだが、重要なツールになったのがiPad。1年前のよくないフォームと、手が加えられた現在のフォームを二画面で比較して、成果を確認しながらさらに理想の投球フォームを模索するという内容だった。それを見て、なるほどなあ、と思った。

 それはとりあえず置いて、東海大四対豊橋工が終わったあと、知り合いのスカウト氏は「森くん、よかったあ」と言った。どこがよかったのか聞くと「140キロ出なかったところがよかった」と言う。スピードより合理的な投球フォームを優先しているところがよかった、ということだろう。このスカウト氏は別れ際、「森くんは社会人か大学に行ったらもっとよくなりますよ」と言った。とりあえず今年のドラフトでの指名はないが、4年後くらいに指名されるような選手になっている、と言いたかったのだろう。

 私が注目したのもフォームのよさである。腕の振りが体に密着してバックスイングは内回りというのがまずいい。投げにいくときのヒジの高さをキープするためには、この内回りのバックスイングは重要なポイントになる。

 テークバック時に右腕が体の陰に隠れ、投げに行くとき左側面から打者に向かっていくので左肩の早い開きが抑える、というのも森の長所だ。さらに重要なのが最近よく聞かれる「脱力投法」。力を入れるのはボールを離す「リリース」の瞬間だけという投法で、藤浪晋太郎(阪神)も今年この脱力をめざしている。

 ここから森の課題に話を移していきたいが、脱力で投げるということは「下半身で投げる」ということである。しかし、森は下半身を使い切れていない。ステップ幅が狭いし、見るからに下半身にボリュームがない。この日の森のストレートが抜けまくっていたのは、脱力で投げようとしながら、下半身が未発達で使い切れていなかったためである。脱力して投げる資格があるのは下半身で投げられる投手だけ、この言葉を心に刻んでほしい。
 ストップウォッチなどで得た数字を紹介する。ストレートの最速は138キロ。投球に要するタイムは1.8秒台で、これは早くも遅くもないというくらいのレベル。ステップ幅が広がればタイムは0.2秒くらい遅くなるので、その分打者のタイミングを見ながら投げることができる。一塁に走者がいるときのクイックは1.17~1.23秒で、これはドラフト候補としては及第点があげられる。

東海大四:大澤-小川
豊橋工:森奎-彦坂
三塁打:山本(東)
二塁打:森奎(豊)

(文=小関順二

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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