【小関順二がストップウォッチで有力選手を分析!】天理守備陣を焦らせた健大高崎の心理的攻撃!
ストップウオッチ的な観点から分析する小関順二氏のコラム。今回はともに全力疾走を徹する天理と健大高崎を分析!そこで見えてきたものとは?
天理守備陣の心理を陥れた機動破壊の威力
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強打の天理を4安打1失点に抑えた川井 智也(健大高崎)
ストップウォッチの話を最初にすると、この試合で打者走者が全力疾走の目安「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアしたのは健大高崎3人3回、天理3人3回と互角だった。そして「一塁到達5秒以上、二塁到達9秒以上、三塁到達13秒以上」を越えた“アンチ全力疾走”は両校とも0人。今大会では1回戦の立命館宇治対静岡、県岐阜商対松商学園に次いで3試合目だった。ちなみに、1回戦の全力疾走のタイムクリアは天理4人8回、健大高崎5人7回とハイレベルで、そういう2校がベスト8を懸けて戦った。
この試合を考えるとき思い返すのが2012年春の選抜大会準決勝、大阪桐蔭対健大高崎戦だ。この年の健大高崎は歴代の中でも“機動破壊”の名に最も相応しいチームだったと思う。その健大高崎がこのときはまったく走れなかった。投手・藤浪晋太郎(阪神)、捕手・森友哉(西武)の大阪桐蔭バッテリーが神戸和貴という選手が試みた盗塁企図を完璧に封じたことによって、それ以降まったく走れなくなったのだ。その再現が昨日の“ワンプレー”を見て、あるかもしれないと思った。
1回裏、健大高崎は死球で出塁した1番春日優馬(3年)が投手の暴投と内野ゴロで三塁へ進む。健大高崎の先制点が間違いないと思われたこの場面、天理の強肩捕手、堤田礼雄(3年)が電光石火の三塁けん制で春日を殺してしまうのだ。これで健大高崎は走れなくなると、私以外にも思った人はいたと思う。しかし、健大高崎の攻めの姿勢は変らなかった。
天理のバッテリーは1回の暴投以外でも、2回に捕手・堤田が捕逸、先発投手の斉藤佑羽が1回に続き4回にも暴投しているが、健大高崎の機動破壊に対する恐れが招いたミスと言っていいだろう。
健大高崎に目を移すと、三塁走者のけん制死が1回の春日に続き相馬優人が7回に記録、4回には相馬優人が二盗に失敗している。結果的に健大高崎の走塁ミスが多かったわけだが、何か仕掛けてくるという“気配”は天理ナインに多大なプレッシャーをかけたと思う。もちろん、健大高崎の勝因の1つに挙げられるだろう。
天理の緩慢な守備も健大高崎のアグレッシブな攻撃の後押しになった。たとえば7回裏、1死二、三塁の場面で健大高崎の7番佐藤望(3年)の一塁ゴロを捕った坂口漠弥(3年)は一塁をカバーした二塁手に緩いトスをして打者走者を殺しているが、その“緩いトス”のスキを衝いて三塁走者の柴引良介(3年)がホームを陥れ、1対1の均衡を破る2点目を奪っている。これも健大高崎の勝因の1つに挙げていい。
もう1つ気づいたのは天理各打者の振幅の大きいバッティングである。ピッチングでもバッティングでもいいと言われる形は「後ろ小さく前大きい」が基本。ところが天理各打者はバットの後ろへの引きが大きくすぎ、バットの出が窮屈になっていた。言ってみれば「後ろ大きく前小さい」バッティングである。健大高崎の先発、川井智也(3年)はそれほど速い投手ではないが、天理打線が抱えてる弱点を正確に衝いて連打を許さなかった。これが健大高崎の最も大きい勝因だったかもしれない。
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天理:齋藤、森浦-堤田
健大高崎:川井-柘植
三塁打:貞光(天)
二塁打:春日(健)
(文=小関順二)
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