創成館vs大阪桐蔭
成長続ける創成館、ミスの出た大阪桐蔭を破り決勝進出
峯(創成館 )
例年、大会4日目の準決勝になると、平日であるうえに、出場校が一通り試合をしたとあって、スタンドでは張り詰めた空気が最初の3日間に比べ和らいでいくことが多い。しかし今年は、スター軍団の大阪桐蔭の存在により、チケット売り場には長いれ列ができ、平日にもかかわらず、1万2000人の観客が詰めかけ、張り詰めた空気になっていた。
大阪桐蔭に対戦するのは、この大会、試合を重ねるごとに成長している長崎県の創成館だ。創成館は、大阪桐蔭相手にも、見事なチャレンジ精神を発揮する。
創成館の先発は、今大会初登板の左腕の七俵 陸。「九州大会も投げていないので、投げるのならば、思い切って先発がいいと思いました」と、創成館の稙田龍生監督は言う。七俵の出来が悪いと試合を壊すことになるが、2回裏に青地 斗舞の左前適時打で1点を失ったものの、大阪桐蔭の打力を考えれば、まずまずの出だしだ。
七俵の健闘を受けて、創成館は3回表に大阪桐蔭の先発・柿木 蓮に対し、猛攻を始める。中前安打の8番・徳吉 涼太が、七俵の犠打で二塁に進み、1番・野口 恭佑は中前安打。中堅手がボール処理をミスする間に徳吉は生還して同点。野口も二塁に進む。続く藤優璃の左前安打で一死一、三塁とし、3番・峯 圭汰の詰まった打球は遊撃手と中堅手の間に落ちて、野口が還り逆転に成功する。
創成館は走者を三塁に置いた場面でも、スクイズの素振りすら見せない。「何点取られるか分からないので、ビッグイニングを作りたかったです」と稙田監督。監督の思いは選手に伝わり、その気迫が大阪桐蔭のミスを誘う。
引き続き4番・杉原 健介は四球で一死満塁。5番松波 基の遊ゴロを、大阪桐蔭の名手・根尾 昂がさばき、二塁に送球したが、これが暴投となり1点追加。さらに6番・松山 隆一のややボテボテの遊ゴロの間に峯も還り、大阪桐蔭のミスにも乗じて、創成館が4点を入れる。
しかしその裏、創成館にもミスが出る。この回先頭の9番・柿木の代打・石川 瑞貴が深いところの遊ゴロ。遊撃手・徳吉が捕球し、一塁送球は暴投となる。一死後、2番・宮﨑 仁斗の強い当たりの二ゴロを藤が併殺を焦り、捕球できず失策2個で一、三塁とする。
ここで3番・中川 卓也は右前安打で石川は生還する。しかし三塁を狙いかけた宮崎は、二、三塁間に挟まれ、二塁ベース上で、宮﨑と中川が重なり、中川がアウト。創成館のミスで得たチャンスを、大阪桐蔭は走塁ミスで十分に生かせない。それでも、5番・大阪桐蔭山田健太の左前安打で宮﨑が生還し、この回2点目を入れる。
創成館は4回から七俵に代えて、184センチの長身の左腕・川原 陸が登板。川原は走者を出しながらも、大阪桐蔭に得点を与えない。
マウンドに上がる根尾(大阪桐蔭)
すると創成館は5回表、大阪桐蔭の2番手・横川 凱から一死後、3番・峯がレフト線に二塁打を放ち、続く杉原の左前安打で三塁に進み、当たっている松浪の中前安打で生還する。杉原も7番・平松 大輝の右前安打で還り、この回貴重な2点を挙げる。
大阪桐蔭は、6回表から遊撃手であった根尾を登板させる。根尾は初球、いきなり144キロの速球を投げ、最初の打者である9番の川原を、最後は146キロの速球で三振に仕留める。根尾は走者を出しながらも、得点を許さず、大阪桐蔭の反撃ムードが高まる。
「継投はリスクが高い。けれども、強いチームには目先を変えないと勝てない」と考える創成館の稙田監督は、8回裏二死二塁の場面で、この大会好リリーフをみせている変則の横手投げの伊藤大和を投入する。大阪桐蔭は途中出場の山田 優太に右打者の飯田 光希を代打に送っていたが、投手の交代をみて、代打の代打で左打者の青木 大地を打席に送る。伊藤は青木を二ゴロに打ち取り、この回は無得点。
9回表には創成館の峯が、この試合2本目の二塁打を放つと、杉原の中前安打で三塁に進み、松浪の右犠飛で追加点を挙げる。
7対3の4点差になっても大阪桐蔭の打線はやはり怖い。9回裏、この回先頭の1番・藤原 恭大が内野安打で出塁すると、2番・宮﨑の二ゴロで二塁に進み、3番・中川の右前安打で還り1点を返す。
ここで創成館の稙田監督は伝令を送り、前の試合と同じように、「変化球でかわそうとするな」と伝える。4番・根尾の左前安打、6番・井阪 太一の四球で二死満塁と、一発が出れば、逆転サヨナラの場面になったが、7番・青地は二ゴロに倒れ試合終了。創成館が大阪桐蔭を破る大金星を挙げた。
「守りのミスに走塁のミスも出ました。力不足を感じました」と、大阪桐蔭の西谷浩一監督は、「力不足」という言葉を繰り返した。これは会見場に現れた他の選手も同じだった。どんなに力があっても、実戦で出なければないのと同じであり、その意味では、ミスが出たことも含め、力不足だったのかもしれない。しかし、大阪桐蔭が本当に力不足のチームだとは誰も思っていない。むしろ慢心するのが怖いほどの力はあるはずだ。それだけに、力不足を認識する結果になったことは、春以降、より強いチームになる、起爆剤になる可能性がある。中川主将は、「自分たちは力がないのが分かりました」と言いなっがらも、高い目標を掲げ、「センバツは優勝旗を還しに行きますが、取り返すのが目標です」と語った。
勝った創成館は、一戦ごとに強くなっていることを、稙田監督も感じている。稙田監督は「一皮むけた」と感じたのは、九州大会の準々決勝で沖縄尚学に勝った時であった。大阪桐蔭に勝ったことで、また一皮むけたに違いない。この秋残るは決勝戦である。相手は明徳義塾。壁に正面からぶつかりながら成長しているチームが、この秋最後の試合で、どのようなプレーを繰り広げるか。楽しみな一戦である。
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