藤嶺藤沢vs湘南学院
藤嶺藤沢・矢澤宏太が投打で躍動!6回7奪三振の好投でベスト8に導く!
今年の神奈川を代表する左腕・矢澤宏太(藤嶺藤沢)。夏初登板となった試合で、14奪三振完封勝利を挙げた。4回戦ではシード校の湘南学院と対戦。灼熱の暑さの中、らしいピッチングを見せてくれた。
1回表、矢澤は2三振を奪う立ち上がり。1回裏、一死二塁から3番矢澤が自信を援護する左前適時打を放ち、1点を先制。さらに5番須田の適時二塁打で2点目。2回裏も、一死二塁から9番原田の適時打、2番兜森の適時打で4点を先行する。
矢澤のピッチングを振り返りたい。
この日の矢澤はスライダー主体のピッチング。矢澤は125キロ前後の曲がりが小さいスライダー、120キロ前後の曲がりが大きいスライダーを投げるが、いずれもストライクが取れて、生命線といえる球種だ。また110キロ前後のスラーブでストライクが取れる。エネルギーの消耗が少ないピッチングでストライク先行ができるようになったのは春からの成長点といえるだろう。
ただ、スライダーに頼りすぎる傾向がある。スライダーを多投する投手に多い現象だが、大事な場面でストレートを投げたいときにしっかりと投げることができない。3回表にタイムリーを打たれたのは、138キロの甘く入ったストレート。大事なところでストレートがいきなかった。ただ4回表はストレートの重要性に気づいたのか。4回表も2つの三振を奪ったが、いずれもストレート。もちろんスライダーでカ投球を組み立てることは大事だが、まだ高校3年生の将来性のある左腕である。今はストレートで勝負したほうがいい。
藤嶺藤沢バッテリーもストレートで勝負したほうが良いと実感したのか。5回以降、スライダーをカウント球にして、最後はストレートで決める配球にしてからがぜんとピッチングが落ち着いた。
6回まで7奪三振のピッチング。ピッチング自体は春よりも進化を見せており、140キロ以上は計測した限り、12球とストレートのスピード能力の高さを見せてくれた。
まだ矢澤自身、ベストピッチングという出来ではなかったが、だんだん仕上がりは見せており、勝ち進むごとに状態を上げていけるか注目したい。
藤嶺藤沢打線は小刻みに点を追加し、10対2でコールド勝ちを収めたが、湘南学院投手陣のレベルが低いわけではない。投手陣のポテンシャルの高さはなかなかのものがある。先発したエースの関野 柊人(3年)は183センチ65キロと長身の右腕で、肩、ひじが柔らかく、コンパクトなテークバックから内回りの腕の振りから振り下ろす130キロ前半のストレートはさらに速くなる可能性を秘めている。まだ変化球の精度が甘いが、将来的には140キロを超える可能性を持っている。
また2番手の古謝 樹(2年)は176センチ58キロと細身の左投手だが、コンパクトなテークバックから鋭い腕の振りから繰り出す130キロ~133キロの直球、120キロ前後のスライダー、100キロ前後のカーブを投げ分ける左腕。高校2年生にしてはまずまずのスピードであり、しっかりと体づくりがうまくいけば、1年後には140キロに到達していてもおかしくない。
3番手の福島 勇世(2年)は粗削りながらも潜在能力は関野より上の本格派右腕。左足を真っすぐ上げて、真っすぐ振り下ろす右のオーバーハンドで、常時130キロ~135キロを計測しており、直球の力強さは登板した湘南学院の投手陣では一番合った。だが、スライダー、カーブなどの精度の甘さが課題。それが狙われて失点を重ねた。181センチ70キロと上背もあり、まだ体の線も細いので、しっかりと体づくりをしていけば、140キロ台に到達する可能性は十二分に持っている。いずれにしろ、湘南学院は古謝と福島が残る。この夏の経験を秋に生かすことができるか注目だ。
(文=河嶋宗一)