彗星のごとく現れたカリビアンスラッガーのルーツ ネフタリ・ソト(横浜DeNAベイスターズ)
2018年6月、彗星のごとく現れたカリビアンが、ホームランを連発。瞬く間にキング争いでトップに立つと、その勢いはシーズン終了まで衰えず、来日1年目にしてホームラン王のタイトルを獲得。
その男の名は、ネフタリ・ソト。今季も順調にホームランを量産し、19日の広島東洋カープ戦ではサヨナラを含む2本のホームランを放って42本まで積み重ねた。2年連続でのタイトル獲得を視野に入れる男の長打力のルーツに迫った。
父から教わった「右方向」へのバッティング
笑顔のソト選手(横浜DeNAベイスターズ)
横浜スタジアムのバックネット裏にあるインタビュールームに入り、いざ撮影しようかという瞬間、かぶっていたキャップを隠し、おどけてみせたソト。その一瞬で同席していたスタッフの緊張が解け、穏やかな空気の中でインタビューは始まった。
カリビアンのイメージ通り陽気なソトだが、打席では鋭い目つきで投手をにらみ、懐の深い構えからフォロースルーの大きなスイングを繰り出し、圧倒的な飛距離のホームランを連発する。今季も既に36本塁打(9/8時点)を放っている。
「僕は小さい頃から、全身を使ってボールに向かい、強い打球を打つことを心掛けてきました。それは今でも意識していますし、日ごろから心掛けています。
まず練習をしっかりやるんですが、練習の段階から試合を想定していれば、試合に入ったときに自然と練習通りのプレイができます。そうやって練習に取り組んで行くことが大事です。」
ソトの打球は右方向にも伸びる。その要因について本人は「これも小さい頃から父親とバッティング練習をする中で、『ライト方向に強い打球を打て』と言われていたので、それが今でも身に付いていて、自然とそうなっています」と話す。
「今は、バッティング練習の中で、最初は右方向に打つように意識して、そのあとは自然な方向に打つこと(を意識しています)。ティー打撃に取り組むときにも、右方向、右方向と意識していました。」
この意識はホームランの方向にも表れている。NPBの公式記録では本塁打の方向を左越本、左中本、中越本、右中本、右越本と5方向に分けて表しているが、それぞれの内訳は下記のようになっている(数字は9/8現在)。
方向 本数 %
左越本 10 28
左中本 9 25
中越本 5 14
右中本 1 3
右越本 11 31
全体的な傾向としてやはり左方向へ引っ張った打球が多いが、よく聞く「中堅から右」という表現だと、36本中17本と半分近くなっている。さらに細かく見て行くと、左越本が10本に対し、右越本が11本と、流してのホームランが多いのだ。
この数字からも、ソトが引っ張りオンリーの打者でなく、状況に応じて流し打ちもできる打者だということが分かる。このことは後述する、状況における打撃の話でも納得できる。
打撃練習は全てマスコットバットを使用
ソト選手(横浜DeNAベイスターズ)
ここからは、長距離砲として育ったソトのルーツに迫る。
「野球を始めたときはショートを守っていました(日本ではセカンドやライトがメイン)。13歳くらいの頃から『将来は野球をやっていくんだ』という気持ちがあって、高校生の年代の頃は毎日野球の練習をしていました。
当時から長距離打者でしたね。そのころの僕のコーチは父親だったので、毎日父親と打撃の特訓をしていました。当時やって良かったと思うのは、重いバットを使って練習することです。
練習は全てマスコットバットを使っていました。今、試合で使っているものよりも重いくらいのバットです。スイングも、バッティング練習も全て。試合のときだけ、試合用の金属バットを使っていました。こうすることで、試合では軽く感じるので良かったです。」
練習と試合で全く違う重さのバットを使うことで感覚のズレはなかったのだろうか。
「そうですね、特にそういうズレはありませんでした。練習で対戦するバッティングピッチャーはそんなに速い球を投げてきませんが、試合のとき相手投手は速い球を投げてきます。それでちょうど良い感じでした。
日本の高校球児にもこの練習はオススメしたいですね。ただ、日本はプエルトリコと違って練習量が多いので、ずっと使うのはオススメしないですが。ある程度の時間重いバットを使えば、スイングに必要な筋力が強化されると思います。
僕はバッティングのための筋肉はスイングでつけていました。高校生のときにウェイトトレーニングを続けていた時期もあったのですが、なぜかそのとき打てなくなってしまって。それから高校生の間はウェイトトレーニングを控え、ランニングをメインにやっていました。自分にとってウェイトトレーニングは必要ではなかったのかもしれません。」
ここまでの話からも、ソトはそれぞれの練習の意図や目的を理解し、自分に合うもの・合わないものを取捨選択しながら野球に取り組んできたことが分かる。
前編はここまで。後編では打席での心構えや日本の高校野球についての印象を聞いた。
(記事=林龍也)