上田誠さん(元慶應義塾高等部監督)「なぜ現代の指導者、選手はSNSを活用するべきなのか?」 【中編】
昨今のスポーツ界では、練習のし過ぎによる故障や、行き過ぎた根性論による指導などが問題となっている。しかし、これに対して疑問を呈し、改善を試みようという動きがあるのも事実だ。
今回は、野球界ではいち早くこの問題に気づき、「エンジョイ・ベースボール」の旗印のもと、坊主頭や理不尽な上下関係の廃止、練習のスタイルまで様々な改革を行ってきた慶応義塾高校元監督・上田誠氏にお話しをうかがった。中編では、ご自身の指導における反省点や、SNSなどを活用した最新の指導について語ってくれた。
「甲子園には行けなかったが、良いチームが作れた」
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―― 上田先生は自分のこだわりに固執し過ぎないというか、考えがどんどんアップデートされていきますね。
まだ野球がなんだかよく分からないですけどね(笑)大学でコーチをしているんですけど、難しいです、本当に、野球を教えるのは。放っておいて、勝手に上手くなれ!と思いますけど。段々、手取り足取りという感じでは無くなりましたが。
―― 今の大学生達は自分で考えてやるスタイルですか?
自分でよく考えてやっていますよ。動画を撮って、回転数やスピードガンを見たりとかね。
色んな形で、機械はたくさんありますから。トレーニングも科学的に色々やっているし。
―― 慶応大学のピッチャーも色々なタイプが出てきましたよね。
そうですよね、良く伸びますよね。今年の秋に急にブレイクし出した森田晃介ってやつは、夏休み明けたら10km/hくらい球が速くなってて「どうしたんだ!?」みたいなことがありました(笑)
―― 高校時代も見たんですが、コントロール型のピッチャーというイメージで、そんなに速いイメージではありませんでした。
ウェイトトレーニングとか体幹とか含めたトレーニングを、他の人以上に頑張ったんじゃないでしょうか。夏休み中、みんなが休んでいる間に。別人になっていたのでびっくりしちゃいました。
―― 上田先生の話を聞くと、いろいろ反省を繰り返しながら今に繋げているような感じですね。
そりゃしてるよ、後悔だらけだよ。
―― どういったところが最初の反省点として出ましたか?
やっぱり最初はハラスメントまがいの事をしてしまい過ぎて、プレッシャーをかけ、意味の無い長い練習、ピッチャー投げさせ過ぎ、色々あります。
―― それを変えていけるのは凄いなと思います。
まあ最後の方は良かったなと思いますね。最後5年くらいは甲子園にいけませんでしたが、なかなか面白かったです。良いチームできたなと思っていて、最後は(神奈川大会)ベスト8で負けてしまったんですが、その連中が大学に行って今年3人(津留崎大成、柳町達、植田将太)プロに行ったからね。びっくりしましたし、嬉しいです。
もちろん甲子園に連れて行ってやりたかったですけどね。
これからの野球人は、自分の考えをどんどん発信していくことが大事
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―― 上田先生はウェブ上でご自身の考えをよく発信されています。
最初は少年野球人口を増やそうと思って学童セミナーを作ったりしたんです。その活動を知られたみたいで、講演会に来てくれと言われて群馬に行ったりする機会を作ってもらえるようになりました。その後、いろいろな方から「この時代はSNSで自分の考えを発信していかないと伝わらないよ」とアドバイスをいただきまして。自分の意見を表明すると、炎上する事もありますが、まあいいかと思ってやっています。
―― これからの野球人、指導者も自分の考えをどんどん発信していくことは大事になってくると思われますか。
あんまりやる人は多くないですが、自分は面白いと思うからやっています。ダルビッシュ選手が有名ですが、大学野球選手もやっていますよね。そういう意見交換は大事だと思います。
―― 高校だとまだまだSNS禁止の学校も多いです。
指導者がSNSの適切な使用に関する指導が出来ないから禁止になっていますよね。大久保さん(秀昭・現慶大監督)はSNSを活用して指導しています。悩んでいる選手にYouTubeの動画送ったり。瞬時に連絡が取れるSNSを利用して部員を指導する、現代的な監督です。
―― 今と昔では指導方法もだいぶ変わってきました。
横浜高校の渡辺元監督も、辞める直前の頃は怒りすぎたと思うと必ずフォローしにいっていたらしいですからね。メールで選手ともやり取りしていたらしいですよ。
中編はここまで、次回はいよいよ最終回。長く野球界で活躍されてきた上田氏の、ケガや故障に対する考え方や、キャプテンを選ぶ際の考え方を語っていただきました。
(取材=河嶋 宗一)