育成重視で2年連続3名の高卒プロ輩出。さらに甲子園ベスト4。京都国際の成り上がりが理想的すぎる
左から、早、釣選手
今夏の甲子園で初出場ながら4強入りの大健闘を見せた京都国際。前橋育英、二松学舎大附、敦賀気比といった強豪校を接戦で下した戦いぶりは見事だった。
前身の京都韓国学園に野球部ができたのは1999年。この年の夏に公式戦初出場したが、前年夏の甲子園準優勝校である京都成章に0対34の5回コールド負け。その時の京都成章の二塁手が当時1年生の小牧憲継監督だったのも、何かの縁だったのかもしれない。
小牧監督は関大を卒業後、知人の依頼で京都国際の指導に携わるようになり、2008年から監督に就任。就任当初から目指してきたのが、上のステージで活躍できる選手の育成だ。目先の勝利を追うのではなく、選手の持っているエンジンを大きくすることに主眼を置いた指導を行ってきた。
その結果、曽根 海成(広島)や清水 陸哉(元ソフトバンク)といった選手がプロの世界に羽ばたき、育成力の高さを示した。それに従い、中学野球の関係者からも高い信頼を得られるようになり、有望選手が続々と入部。その中で選手の間で勝ちたいという気持ちが次第に強くなり、育成と勝利の両立を追い求めるようになった。
甲子園に大きく近づいたのが、上野 響平(日本ハム)が主将を務めた2019年。前年秋には近畿大会に出場し、春の府大会を制した。夏の府大会も決勝まで勝ち進み、8回表までリードを奪っていたが、立命館宇治にサヨナラ負けを喫して、甲子園初出場とはならなかった。
早 真之介(ソフトバンク)と釣 寿生(オリックス)が最上級生となった2019年秋も9回表に5点差を逆転されて、府大会準々決勝敗退。2020年の夏はコロナ禍で甲子園大会が中止と甲子園への道のりは近いようで遠かった。
プロ野球選手を輩出した過去2年と違って、今年のチームは個々の能力はさほど高くないと小牧監督は感じていた。それでも秋の府大会を3位で通過すると、近畿大会でも接戦を粘り強く勝ち抜いて4強入り。今春に甲子園初出場を決めた。
センバツでは1回戦で延長10回の末に柴田を下して、甲子園初勝利を飾る。しかし、2回戦の東海大菅生戦は1点リードの9回二死満塁から逆転打を打たれてサヨナラ負け。8強入りとはならなかった。
京都国際ナイン
この試合で押し出し死球を恐れて内角を突けなかった反省から森下 瑠大(2年)と中川 勇斗(3年)のバッテリーはストレートの向上に力を入れてきた。夏の府大会決勝では9回表、二死二、三塁と一打同点の場面で全球内角勝負を挑み、甲子園出場を決めるアウトを掴み取った。
甲子園でもセンバツでの反省を活かして、後半に強さを発揮した。3回戦の二松学舎大附戦では9回裏に3点差を追いつかれたが、そこからズルズルいかずに延長戦で勝ち切ったのはチームとしての成長を感じさせた。
準決勝で智辯学園に敗れたが、前評判を大きく上回る大健闘と言っていいだろう。「育成に重きを置きながら勝ち上がっていけるチーム作りを変えるつもりはありません」と小牧監督は今後も育成と勝利の両立を目指すことを明言。この秋も府大会8強入りを決めており、3季連続の甲子園出場に向けて歩みは順調だ。
甲子園で攻守に大活躍を見せた正捕手の中川はプロ志望届を提出。10月11日のドラフト会議で指名されると、京都国際から3年連続でプロ野球選手が誕生することになるが、果たしてどうなるだろうか。
ここ数年、高校野球ファンからの注目度が急上昇している京都国際。1、2年生にも力のある選手が多く、今後も様々な話題を提供してくれそうだ。
(記事:馬場 遼)