中京vs美濃加茂
エースの自覚
初戦としては屈指の好カードとなった中京と美濃加茂の一戦は、エースと4番が活躍した中京がリードを守り切り、3回戦進出を決めた。
今大会で背番号1をつける市川良太（3年）の好投が光った。6回二死で不運な内野安打を浴びるまではノーヒットピッチング。自己最速140キロのストレートにかなりの伸びがあり、勢いよく内外角を攻められる。本人は「今日は調子が良くなかった。ストレートも走らなかった」と言うものの、「夏前に球速が上がった。常時130キロ台後半が出るようになった」と感触は確かだ。決め球のスライダーは、タテに落ちればフォークと見まごうかのような落差とスピード。牽制のターンも素早く、細かい芸当も身に付けていた。
昨秋から継投中心で絶対的エース不在の中京だったが、中学時代にシニア東海選抜メンバーに選ばれた大型右腕が、最後の夏にようやく柱になった。本人はその要因を「ずっと自分本位のピッチングだった。でも春の県大会でベンチを外されて以来、チームが勝つために投げようと考えるようになった」と精神面での脱皮だと分析。筆者も昨秋などに見ているが、技術面でも精神面でもここまで成長していたことに驚いた。
エースが好投すれば、4番打者の打撃も冴えた。今春から4番を務める石坂友貴（2年）が3回裏、先制の2点タイムリー二塁打をレフトへ放つと、5回裏にも3打点目となるレフト前タイムリー。7回裏にも二塁打で出塁し、この日3安打をマークした。2年生主軸の元気な打棒に引っ張られるように、3回裏には山口大貴（3年）、高田昭吾（3年）の連続タイムリーで加点した。
柴田秀仁監督は「最初は力が入りすぎて焦っている部分もあったが、だんだんと落ち着いてきた」とチームに及第点を与えた。
後藤庸輔（3年）、熊崎文洋（3年）ら中継ぎ陣もマウンドに立ち、夏の大会の雰囲気を感じられたのも明るい材料だ。
敗れた美濃加茂は先発の松田光司（2年）や背番号1の日比野将也（3年）らが踏ん張ったが、序盤は相手エース市川の前にヒットが出ず、終盤になって走者を出したが還せなかった。
(文＝尾関雄一朗)
