関東一vs二松学舎大附
関東一序盤の猛攻で12年ぶり4回目の優勝
先制弾の佐藤佑(関東一)
もはや宿命の対決と言っていいだろう。これまで幾度も大事なところで対戦し、昨年の秋も、センバツ出場をかけて、決勝戦で対戦した。その時敗れた二松学舎大附にすれば、リベンジの舞台である。
その時先発した二松学舎大附の大江 竜聖、関東一の佐藤 奬真は、前日の準決勝で完投したためこの試合では使わず、二松学舎大附は、4回戦と準々決勝で好投した、普段は外野手の市川 睦が、関東一は制球のいい背番号1の河合 海斗が先発した。ただし大江は、右翼の守備についた。
試合は1回から動き出す。
1回表、この試合先発2番で起用された菅谷 圭祐が中前安打で出塁。相手投手が大江であれ、市川であれ、左腕ということもあり、右打者の菅谷が起用された。そして4番の佐藤 佑亮がレフトに2ランを放ち、関東一が2点を先取する。「ストレートを待っていて、スライダーでした。根っこの感じでしたが、振った結果です」と佐藤佑は言う。これは、センバツで東邦の藤嶋 健人に抑えられた教訓から来ている。関東一の米澤 貴光監督は言う。「勇気を持って、変化球にも手を出す。待っていない球も思い切って打つことを意識させています」
その裏二松学舎大附は二死後、市川の中前安打、永井 敦士の死球で一、二塁とし、続く今村 大輝は三塁強襲の当たり。打球はレフトに転がる二塁打となり、市川が還った。ここまでは接戦の雰囲気であったが、2回表に試合の流れは、関東一に一気に傾く。
この回先頭の6番米田 克也、7番竹井 丈人が連続中前安打。米田が三塁に進塁する間に竹井も二塁に進み、続く9番河合の中前安打で2人が還る。さらに1番山川 新太、2番菅谷の四球で満塁となり、3番本橋 慶人の二ゴロを、二松学舎大附の守備がうまい二塁手・鳥羽 晃平が失策し2人が還った。
ここで二松学舎大附のマウンドには、一塁を守っていた橋本 雅弥が上り、スタンドがどよめく。「練習試合では投げていました。そこそこボールは来ているし、コントロールも悪くない。それに肩ができるのも早いですから」と二松学舎大附の市原 勝人監督は言う。
実際投球練習をやっていなかったのにもかかわらず、身長183センチ86キロの体格から、力のある球を投げつつ、時おり、チェンジアップなどで緩急をつけて、後続の打者を抑えた。
本塁打の市川(二松学舎大附)
3回裏、二松学舎大附は今村の特大の本塁打で反撃の気配をみせる。けれども、またも守備で傷口を広げる。
4回表関東一の2番菅谷は二ゴロ。これを鳥羽が捕球ミスをして、かつ一塁にも悪送球で菅谷は二塁に。守備がうまい鳥羽であるが、2回の失策が響いたのか、どうも動きが硬い。さらに本橋の中前安打の後、4番佐藤佑の三ゴロを、主将の三口 英斗が失策し満塁に。ここで米田が走者一掃の二塁打を放ち、3点を入れた。
6回表には、本橋が二盗した際、捕手・今村の送球が暴投になり、本橋は三塁へ。佐藤佑の中犠飛で関東一は1点を追加する。それでも橋本は、守りのミスから失点したものの、関東一の強力打線をかなり抑えた。橋本は7回1/3を投げて、被安打3、四死球2と好投。しかし自責点は1ながら、失点4であった。
二松学舎大附は7回裏に、関東一の2番手・小川 樹から市川の本塁打で1点。さらに安打2本と四球による無死満塁の場面で、大江の二ゴロは4-6-3の併殺になったものの1点を入れた。しかし反撃もここまで。
関東一は9回裏に期待の2年生・高橋 晴をマウンドに。高橋は先頭打者に四球を出したものの、後続を二飛の後、二者連続三振に仕留め、関東一が秋春連続で、春季都大会は12年ぶり4回目の優勝を決めた。
「今日は勝ちに行こうと思っていました。大江君が投げていなくても、勝てたことは大きいです」と関東一の米澤監督は語る。また主将の村瀬 佑斗は、「甲子園で通用しなかったことを踏まえて、この大会を戦ってきました』と語る。
センバツ後マシンをストレートは150キロ、スライダーは135キロに設定して打ち込んできた。その結果、打線に厚みが増してきた。センバツでの完敗を受けて、チームはまたたくましくなった。それでも関東一の米澤監督は、「甲子園の借りは甲子園でしか返せない」と語る。その過程にあるのが、関東大会だ。「関東大会では、相手は全部強いチームと思い、1試合でも多く戦いたい」と米澤監督。村瀬主将も、「まだまだ成長の過程です。関東大会では、しっかり結果を出したい」と語った。
一方敗れた二松学舎大附は、表彰式後、ロッカーからなかなか出てこなかった。ようやく出てきた市原監督は、「普段の学校生活を含め、すみませんで済ませている。どちらかというと甘い。その甘さを直していきたい。春は心残りのまま終わった。夏の大会の前の途中では、ラッキーだったかもしれない。関東大会にも出られますから」と語る。同じ相手に連敗した悔しさを、選手たちがどこまで屈辱に感じ、夏に備えるか。二松学舎大附は、選手個々の能力は非常に高い。それを結果に結びつけるには、勝負に対する執念を、どこまで表に出せるかではないか。
まずは、関東一と二松学舎大附の両校には、関東大会での健闘を期待したい。そしてこの両校には、まだドラマの続きがあるような気がする。他校も力を付けてくる中で、どのような結末が待っているのか。1年生も加わり、夏に向けての戦いは、これから本格化する。
(取材・写真=大島 裕史)
注目記事
・2016年度 春季高校野球大会特集