佐野日大vs矢板中央
挨拶に向かう、佐野日大ナイン
好投手対決は、立ち上がりを制した佐野日大が春のリベンジ
栃木大会前半屈指の好カード。春も県大会初戦で対戦している両校だが、この時は矢板中央が昨夏の代表校・佐野日大を4―1で下している。そこことはあまり気にしていないという矢板中央と、意識して挑んだ佐野日大だったが……、果たして。
矢板中央は、最速144キロをマークしたことがあるという速球を持っている右の本格派・福田君が投打の中心となっており注目が集まっている。佐野日大は、体は決して大きくはないものの、スライダーのコントロールがよく、低めに球を集めていく中村君の先発だ。
この、両投手の対戦だけに、前半はそれほど得点は入らないだろうと思われた。ところが、試合は初回からいきなり大きく動き出した。
佐野日大打線は、福田君のストレートに的を絞って、早いカウントからどんどんと振っていく姿勢を示す。
初回は、庄司君が中前打で出ると、バントで進め、3番・齋藤祐君の三遊間を鋭くゴロで破る安打で先制。
佐野日大打線は、福田君のストレートに的を絞って、早いカウントからどんどんと振っていく姿勢を示す。
初回は、庄司君が中前打で出ると、バントで進め、3番・齋藤祐君の三遊間を鋭くゴロで破る安打で先制。
その打球が大きく跳ねて、野手がはじく間に打者走者も二塁進塁。4番・保坂君も中前タイムリーを打して2点目。さらに、2死二塁となってから、6番・齋藤正君も中前打して佐野日大はこの回で3点を先制した。
4回にも、佐野日大は二塁打の齋藤正君を2つのバントで帰した。5回にも、齋藤祐君が左中間二塁打すると、2死三塁となってから、野口君、齋藤正君、石川君の3連打でさらに2点を追加して、5回までで思わぬ大差がついてしまった。
矢板中央・奥澤監督
初回の3点で、比較的楽な気持ちで試合に入れた中村君は、持ち味のスライダーを低めに集めてそれがしっかりと決まっていた。矢板中央打線はわかっていても打ち切れず苦しんだ。
終わってみたら、4安打完封で、9三振を奪い、四死球は2。松本弘司監督は、
「春負けていますから、とにかく前半は競り合っていければいいと思っていたのですが、スタートで思わぬ形で点が入りました。中村には、いつも、最少失点に抑えていくという気持ちが大事なのだということは伝えていたのですが、まさか、0に抑えてしまうとはね…」と、中村君の好投を勝因に挙げていた。
昨年秋の11月、前任のベテラン樋下田宏一監督から引き継いだ矢板中央の奥澤将司監督は32歳。
5年間の部長兼コーチを経ての就任だったが、ベンチでは選手に率先して声を出し、盛り上げながら指揮を執っていた。
しかし、結果は、春季大会のリベンジを食う形になってしまった。
初めての夏の大会の采配は、本人としてもいささか悔しい結果になってしまった。
「選手たちは、昨年暮れに、突然の監督交代で戸惑いもあったと思います。それでも、よくついてきてくれました。勝たせてあげられなかったのは、指揮官として、まだ力不足ということです。福田は結果は残せませんでしたが、これからはもっと上のステージでやって行ける選手だと思っています」と、時折、汗と涙を拭きながら語ってくれた。
そして、選手たちに対しては、
「野球には負けたけれど、ここまでやってきたことに対しては胸を張って欲しいと思います。それは、この後ミーティングでも伝えたいと思います」と、目頭を熱くしながらも、若き指揮官の好漢は、選手たちへの思いを述べていた。
近年、立て続けに関東大会進出を果たしている矢板中央だけに、これからにも期待したいと思った。
(文=手束 仁)