Column

新入生部員が心掛ける4ヶ月間

2015.04.02

遠藤友彦の人間力!

 ワクワクして入部した高校野球。中学生とは違い身体の大きさで驚く選手も多いと思います。高校野球をする時間は3年間ありません。実質2年半、私が様々なチーム指導した経験で、入部した4月から夏までの時間がもっとも大事だと痛感します。

新入部員は何をしていけばいいか?

【写真:野球部訪問 前橋育英高等学校(群馬)より】

 新チームに移行するまでの4ヶ月弱の間に、新入部員は何をしていけばいいのか・・

 この時間の使い方によって、高校野球人生が大きく変わるといっても過言ではありません。しかし、最上級生が最後の夏を控えての4ヶ月でもあるので、指導者の目が行くのは主力選手になります。一番充実させたい時期なのに入部したての一年生にはなかなか目が行きません。

 よくあるパターンは、守備練習のときにはファールゾーンで声出し。別メニューで体力向上のトレーニングなどをしています。こういったよくある一年生の練習風景を見ていると「もったいない」と感じます。

 夏までに最高の準備をするべき期間に、浪費に近い時間の使い方をしています。このコラムは指導者も見ていると思うので、参考にして欲しいと思います。

 一年生が三年生と一緒にいられるのは、たった4ヶ月程度の時間です。私は積極的にコミュニケーションを取るべき期間だと思います。三年生は自分のことで精一杯なので、三年生からではなく、一年生から話を聞くことです。

 三年生は質問して答えることで自分の確認にもなります。最後の決戦に向けて、今までしてきたことを再確認するにはいい時間です。チームの方向性を一年生は早く知ることです。今まで中学でしてきたことを良きものは踏襲しつつ、高校チームで大事にしていることを把握するのはかなり重要です。

 私が監督であれば、一年生だけのミーティングを何度も繰り返し、走攻守の「目安」を徹底的に伝えます。あくまでも夏までは上級生がメインなので、技術練習ができる時間は限られています。フリー打撃、ノック練習、ほとんどないのは当たり前です。ここで重要なのは、【自主練習】です。合同練習のときには先輩たちの動きを観察し、自分が動ける時間になればチームの方向性に沿った動きを試します。

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[page_break:選手同士が伝えていける環境づくりを]

選手同士が伝えていける環境づくりを

【写真:野球部訪問 履正社高等学校(大阪)より】

 学校での練習の他、自宅や寮で行う自主練習が大切です。まずは形作りが大切で、試合に出るまでの頭の整理もしておきます。
この4ヶ月で、声出しだけで終わってはもったいない。新チームになって二年生と競争できるくらいの準備をしておかなければいけません。目安や考え方を早めに吸収して、自分の成長に繋げる期間なのです。

 チームとして私は積極的に練習参加させるべきだと考えます。例えば、守備練習のときに自分の守りたいポジションの後ろにつかせます。人数が多ければ大変ですが、邪魔にならない少し後ろの位置で見させます。ノックは受けなくても、実際に守る視野で見させます。

 またノックの合間に三年生は、自分が意識していることを一年生に話すように指示しておきます。ファールゾーンで見るよりも、近い場所で「見聞きする」ほうが効果絶大です。

 ウォーミングアップでも、後ろに一年生を配置するのではなく上級生とサンドイッチにします。もちろん一年生はぎこちなく緊張しながらの時間になるでしょうが、近くにいれば会話も自然に起きることでしょう。
早く慣れて、早く吸収できる環境作りを指導者はするべきです。

「一日に●回は、三年生に質問する」

 こういった新入生ルールを決めておくのもいいことです。積極的に会話させることでチームの伝統は、継承されていきます。

 私が指導している県立山形中央高校は、二年生が新入生にすべて教えます。チームでの決まりごと(ルール)、技術の目安、入学した瞬間から「スピード」を意識して伝えます。伝えるのを中途半端にすれば、一年生の動きの質は落ちていきます。

 どう伝えるのか・・

 山形中央は二年生が伝えますが、三年生も交えて【選手同士が伝えていく】ような風土があれば最高です。この時期は教師の転勤もあるので、公立高校であれば4月で監督交代ということがよくあります。

 監督(指導者)がいなければ伝えられないのでは、いなくなればイチからになります。毎年成果を上げるチームは、選手同士で伝えるような仕組みがあります。伝える側も「何をどのように」という伝えるリストがあれば難しくなく伝えられることでしょう。

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[page_break:上級生と積極的に接点を持つことが大切]

上級生と積極的に接点を持つことが大切

【写真:野球部訪問 県立西尾東高等学校(愛知)より】

 一年生の視点で話を戻しますが、積極的に上級生と接点を持つことは大切です。三年生が引退したあとにスタートダッシュかけられるように、準備をしておくことです。同じ一年生の中でも競争が入部してからすぐに始まっています。

 競争の中で大切なのは、アピールです。指導者に対して、先輩に対してのアピールは生き残りを考えればすぐに意識したほうがいいです。

 徐々に・・

 と思っていたら、消極的な行動で受動的な選手になってしまいます。一年生でもチーム事情によりすぐに試合に出る選手もいます。強かった駒大苫小牧高校を指導していたときに、新一年生が甲子園メンバーに選ばれたこともありました。背番号18をつけて代打でヒットを打っていましたが、入部するまでの準備が素晴らしければ可能性は「0」ではありません。

 100人の私学チームで一年生が登用される例もあるので、入部するまでの時間も大切だと感じます。この前まで中学生だった選手が、高校野球をスタートさせて4ヶ月後夢の甲子園の土を踏んでいることもあります。

 昨夏の山形中央高校の甲子園初戦、一年生の鈴木選手が先発でセカンドを守りました。彼の強みは「守備」、自分の強みがチームの欲していることにマッチして登用されました。

 自分の強みを持つ・・

 中学までに自分の強みを明確にして、磨いておくことでミラクルも起きます。バランスも大事ですが、突出する強みを持っていることは大きな武器(アピールの材料)になります。

 新一年生、夏までチームのために様々な貢献をしつつ、新チームからの準備をしっかりして欲しいと思います。秋に強いチームがありますが、こういったチームは比較的早い段階での一年生育成がうまくいっていると思います。単純に「いい選手がいるから」というパターンもありますが、育成システムがよければ秋の大会は有利にすすめられます。

 実質二年半と言われている高校野球、何よりもスタートが大切です。指導者も新一年生も未来に繋がる四ヶ月の使い方をして欲しいと願います。

(文=遠藤 友彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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