Column

【センバツ総括】ドットコムでもお馴染みの松倉氏に訊く!今年の選抜! Vol.1

2015.04.08

 敦賀気比の北陸勢初の優勝で幕を閉じた第87回選抜高等学校野球大会
今回はドットコムでもお馴染み、選抜取材直後の松倉 雄太氏に今年の選抜大会を振り返ってもらった。出場校で気になった事、または見習いたい点など、参考になるエピソードが満載です。

敦賀気比は落ち着いた選手が多かった

平沼 翔太(敦賀気比)

 まず話題は優勝した敦賀気比について。やはりエースで4番の平沼 翔太が絶対的な存在だった。その平沼の成長点に挙げられるのが、「不調ながらも試合を作る」こと。昨秋を振り返ると夏の甲子園での激闘の疲れもあり、本来の投球が出来なかった。そういう中でもしっかりと試合を作って、勝てたことが選抜での投球に生きたようだ。

 今回は、対戦チームとの力関係、試合展開を考えると、控え投手を登板させるのは厳しい状況だった。振り返れば奈良大付、仙台育英静岡大阪桐蔭東海大四。そんな強豪相手にもしっかりと試合を作り、一人で投げ切った平沼の存在は大きかった。

 そしてリードする嘉門 佑介の存在も大きい。敦賀気比は2学年上は喜多 亮太(セガサミー)、1学年上は岡田耕太(現・駒澤大)と全国クラスのキャッチャーがいた。そんな先輩たちと比較されることが多く、厳しい指摘もあったようだが、それを乗り越え、平沼の持ち味を出すには欠かせない選手だった。

 敦賀気比の選手の取材をして感じたのは「自分の言葉で喋ることができる選手が多い」ことだという。
「実際に取材をしてみて、他人とも対話ができ、はっきりと自分の考えを伝えられる選手が多い」

 実際、敦賀気比の選手は、伝統的にしっかりと対話ができる選手が多いようだ。

 高校野球は監督が目立つチームと選手が目立つチームの2通りある。高校野球にとって指導者の存在はかなり重要だ。監督主導でチームを強化していくことも全く悪いことではない。ただ大学でも野球を続ける場合、学生主導で動いたり、自主性が求められることが多くなる。そんなとき、しっかりと自分の考えを主張し、自分の考えで上達できる選手の方がずっと伸びる。大学野球に限らず、近年、実績を残す自主性を重視したチームが多い。敦賀気比のようなチームの選手は、次のステージを考えると得をしているともいえる。そんなチームが全国制覇を成し遂げたというのは、考えさせるものがある。

下記記事もあわせてチェック!
【インタビュー】敦賀気比高等学校 平沼 翔太投手(2015年01月03日公開)
【野球部訪問】東海大学付属第四高等学校(2015年03月19日公開)
【野球部訪問】敦賀気比高等学校(2014年12月13日公開)
【野球部訪問】大阪桐蔭高等学校(2011年05月27日公開)

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[page_break:東海大四はすべてが上手くかみ合ったチーム]

東海大四はすべてが上手くかみ合ったチーム

大澤 志意也(東海大四)

 準優勝東海大四だが、松倉氏曰く「うまくかみ合ったチーム」と評する。
「大会前にエースの大澤 志意也君は、大会6日目の第1試合の遅い日程に対し『逆にしっかりと時間を取って調整ができる』と答えていました」

 実際に大澤のその言葉通り、初戦の豊橋工で3安打完封勝利を飾ると、2回戦松山東戦でも、0対2の2点ビハインドの8回裏に逆転に成功し、ベスト8進出を決めた。この時、選手の表情を見ると諦める様子はなかったようだ。

「いきなり米田 圭祐選手の2ランで先制されましたが、選手たちの表情を見ると、全く動揺する様子はなく、逆転できるぞという雰囲気が漂っていました。試合後に話を聞くと、北海道大会準々決勝・北見工戦と同じような展開で、逆転できるイメージはあったようです」

 北見工戦では、9回二死まで負けていた。しかしそこから逆転勝利を果たす。自分たちの経験を大舞台で発揮したのは素晴らしい。またターニングポイントとなったのは、健大高崎戦(試合レポート)だ。この試合、お互いともにエースではない投手が先発したが、試合は投手戦となった。結果的に1対0で勝利した。

 準々決勝でエースではなく控え投手が先発するのは、全国制覇のためには必要な戦略だと両監督が話をしていたようだ。ただ相手との力関係などで、それができるとは限らないのがトーナメント。東海大四決勝まで自分たちの思惑通りに試合運びが出来たのが、躍進の理由となった。

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[page_break:自分たちの試合運びが出来なかった大阪桐蔭、初戦が山場となった浦和学院]

エース頼みになってしまった大阪桐蔭、初戦が山場となった浦和学院

荒木 裕也(浦和学院)

 夏春連覇を目指し、選抜に臨んだ大阪桐蔭。投打ともに優れた野球を展開していたが、誤算だったのはエース田中誠也以外の投手を秋からほとんど投げさせることができなかったこと。準決勝の3回以降から、高山 優希(2年)、松井 孝太郎(3年)、岩本 悠生(2年)の3人の左投手が登板したが、秋はほぼ登板機会がなかった。高山、松井は1試合ずつ登板したが、岩本は未登板。経験値が不足しており、それが田中頼みの構成となった要因である。

「去年は近畿大会ベスト8で敗退し、他の投手が投げることなく、田中君で終わった。もし選抜出場が近づく準決勝以降ならば、田中君以外の投手に経験値を積ませることも考えられました。秋の戦い方がそのまま今大会の戦いぶりにつながったと思います」

 これほど能力、意識が高い選手が揃っていても、全国制覇の道は非常に険しいというのが分かる。だが大阪桐蔭は史上初の夏の大阪大会4連覇がかかっている。準決勝で登板した3人の左投手は非常に潜在能力が高く、改めて層が厚いことを印象付けた。この夏も全国制覇を狙えるチームとして注目されるのは間違いない。

 浦和学院初戦龍谷大平安戦が山場となった。試合は延長11回に2点を先制し、勝利をモノにした。

 松倉氏によると、龍谷大平安原田 英彦監督は、「浦和学院は組織力で向かってくるチーム」と試合前から話していたようだ。勝つために全員が徹底して、作戦を実行するのが浦和学院の強み。準々決勝では高橋 純平県立岐阜商)を攻略し、準決勝に進出。浦和学院の強みが随所に出た大会でもあった。また安定感ある戦いができたのは、エース江口 奨理の存在が大きい。今大会では2完封を果たし、球速が130キロ前後でも、縦に落ちるチェンジアップとのコンビネーションが大きく嵌った。

 準決勝で敗れたが、攻守ともに完成度が高いチーム。夏の大会へ向けて、俄然注目度が高まっていくのは間違いないだろう。

 次回はベスト8で敗れ去った常総学院県立岐阜商健大高崎の選手のたちから思わず感心したくなるようなエピソードを紹介。より野球に対しての考え方が深まる取り組みでした!お楽しみに!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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