Column

6年の開発年月をかけて実現した75%のボール 世界一メンバーも愛用したトレーニング器具に注目

2023.11.02


MOI-75

(この記事にはプロモーションが含まれます。)
高校野球では近年、大きな変化が続いている。肩・肘を守る球数制限、酷暑対策の白スパイクやクーリングタイムといったルールの改正。さらに「脱丸刈り」といった慣習も数年で一気に変化した。
練習方法も同じだ。長時間の全体練習を通じて練習量を確保するのが主流だったが、映像や計測機器を使って課題を可視化させて、個人練習の効果を高める練習法の需要が高まってきた。個の能力をアップさせる重要性が高まることを受けて、各スポーツメーカーもトレーニング器具や計測器を充実させている中、スポーツメーカー・ミズノは、回転数に着目したトレーニング器具・MOI-75を発売させた。

NPB選手も愛用!全選手が使える回転改善のトレーニング器具


写真提供=ミズノ株式会社
慣性モーメント(MOI)(=Moment of Inertia)を75%まで制限した練習球ということで命名されたトレーニング器具で、回転数の向上・改善に効果があるとされている。近年は球速だけではなく、回転という要素も駆使して選手たちを分析することを考えれば、現在の需要にマッチしているといっていい。MOIが小さいことにより、回転がしやすい。なので、同じ力感で投げれば、大きい回転数を体感できる。打撃練習の一環で、軽いバットもしくはノックバットを使って、スイングスピードを上げる練習があるが、それを球に置き換えるとイメージできるだろう。

MOI-75の開発に携わったミズノ・中田真之さんによると、「指先での球の動き、リリースの瞬間を感じてほしい」というのが一番の目的だという。球そのものの大きさ、重さは通常の硬式球と同じだが、MOIが75%に設定されていることで抜けやすくて、使う人によってはかなり高めに投げてしまったり、普段以上にシュートしてしまったりするケースがあるそうだ。こうしたことが起きないように、「球をつぶす、抑えるように低めに投げよう」と意識し始めることで、回転数が上がりやすいリリースの感覚を覚えるという仕組みだ。

写真提供=ミズノ株式会社
だから投手はもちろん、野手、特に捕手や外野手など遠投で強い送球をするポジションの選手にとっても効果は大きい。さらに別売りで球速、回転数、変化量を計測できる「MA-Q」で数値化すれば、なお練習効果や成長具合がチェックできるなど、あらゆる使い方があるのがMOI-75である。既にNPBでは、日本ハム・伊藤大海投手(駒大苫小牧出身)が使っているなど、既にトップレベルの選手たちも注目。毎年開催されている日本野球学会でも、MOI-75については発表をしていたため、関係者のなかでは知られた器具となっていたこともあり、「順調に売れている」と幸先よいスタートを切れているようだ。

6年の月日を費やした1球で練習改革を

MOI-75とMA-Q

発売に至るまでの道のりは険しかった。ミズノ社で展開しているMA-Qは2018年から発売しているが、ほぼ同時に研究開発がスタートした。中田さんは発足して2年が経過したタイミングで合流したが、状況は思わしくなかった。
「慣性モーメントの数値をどこまで下げるか。コストに見合ったそのための素材をどうするかなど、2年を費やしても、それほど進んでおらず、『どうやって進めるものか』と考えたことは覚えています」

もともと回転数の向上は、あまり明確な回答が出ていない分野。こうすれば回転数が上がる、という正解がない難しい領域だという。難航するのは致し方ないともいえるが、任された以上、中田さんは正面から向き合った。そこには中田さんなりにも思いがあった。
「データとか、スポーツ科学の知見から、野球人の効率的な成長が実現できる。練習改革を起こしたい、というのが会社としても、個人としても思っているところなんです。プロ野球であれば、トレーナーやアナリストと呼ばれる専門家が、各チームにたくさんいます。だけどアマチュア野球は、そこまでやれないチームが多いので、ミズノが少しでも専門家がやっていることをサポートできればと考えています」

また野球人口の観点から見ても、大事な商品だととらえていた。少子化、野球人口の減少で、野球をやる子どもたちそのものも減っているのは、周知の事実だ。そうした子どもたちがケガはもちろん、「上手くならないからつまらない」などの理由で野球離れをしないように、MA-Qなどの計測器で少しでも成長を実感して楽しく野球に取り組んでほしい。そのためには効果的な練習が必要で、MOI-75といった器具が必要になってくるというわけだ。

中田さんはMOI-75の完成に向けて、日々研究や実験、データ収集・分析、見直しなどを続けた。的確な慣性モーメントはどれくらいなのか。商品化するにはどんな素材を使えば実現するのか。あらゆる要素を考慮しながら、徐々に形に仕上げてきた。普段の硬式球とは違い、中心を鉄球に変更。さらに鉄球の周りには、ポリウレタンを採用。人気複合バット・ビヨンドマックスで使っている素材を採用することで、慣性モーメントの数値を75%にしつつも、量産できるようなコストを実現した。

市場に出る前、テストとしておよそ80人の選手に使ってもらったり、学会で発表したり、自社の契約選手に試してもらったが、好評の声が多かったという。中田さんが合流する前を含めると、およそ6年間の年月をかけて完成したこともあり、そうした声が多かったことにホッとしているようだった。今回、発売となったMOI-75は目指す練習改革の一部でしかない。しかしこの球が、野球界にどんな影響を及ぼしていくのか。6年間の期間を経て誕生した新道具に、これからも注目したい。
詳しい原理や検証結果はこちら

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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